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    【外国人と】ロシアの天使が空から落ちてきた 【エッチ】


    僕は、23歳の大学生で、休学していたのでまだ2年生です。
    昔から、英語が好きで、休学していたのもアメリカを放浪していたからです。

    そのおかげもあって、映画はしゃべるのも含めて、問題ないレベルです。
    とは言っても、英語が出来るくらいで就職が有利になる時代でもないので、すでに就職に関しては色々と調べて動いていました。

    僕は、自分ではそこそこ整った顔だと思っていますが、いわゆる草食系なので、彼女もこの歳まで作ることが出来ませんでした。とは言っても、それほど強く欲しいと思っているわけではないので、毎日趣味などで楽しく過ごしていました。
    趣味と言っても、アニメを見たり、フィギュアスケートを見たりするくらいですが、それで毎日充分楽しいです。


    そんなある日、秋葉に買い物に行って、ちょっと外れの方にあるショップに向かう途中、いきなり英語で声をかけられました。
    『あなたは、英語しゃべれるのかしら? 本当に、誰もしゃべれないって、信じられない!』
    と、かなりイライラした感じで言われました。
    振り返ると、ちょっと大きめのコロ付きのバッグを持った、小柄な金髪の白人さんがいました。
    どう見てもまだ子供なんですが、恐ろしいほどの美しさで、射抜くような青い目で僕をじっと見つめていました。

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    僕は、気圧されるように、
    「しゃべれます。なんでしょうか?」
    と、気弱に言ってしまいました。

    僕をじっと見ていた美少女は、
    『ハニュー、、、』
    と、ボソッと言いました。
    「あ、違います。別人です。似てると言われますが、違います」
    と、しどろもどろで答えました。

    僕は、フィギュアスケートの羽生選手と似ていると言われることがあります。
    彼が話題になるようになってからは、にわかに僕もモテ期が来たのかな?と、思うくらい、女子に話しかけられるようになりました。
    でも、顔はちょっと似てるけど、羽生選手とはスペックが違いすぎます。僕は弱気ですし、スポーツもダメ、勉強も英語以外はごくごく普通、、 本当に、同じ人類とは思えないくらい、彼とは差があると思います。


    『わかってる、、 ねぇ、ここにはどう行けばいいの?』
    英語が通じるのがわかって、イライラも収まったのか、普通の口調でした。
    でも、ニコリともせずに、淡々と言う彼女は、氷のように冷たい印象でした。
    それにしても、驚くほどの美少女です、、、

    そこで僕は気がつきました。
    この子は、リプニ○カヤさんだと、、、
    フィギュアスケートを見るのが好きな僕ですから、間違いないと思いました。
    「ユ、ユリアさんですか?」
    おっかなびっくり聞くと、右眉が少しだけ上がりました。
    『で、ここにはどう行けばいいの? 答えてくれますか?』
    聞かれたことにだけ答えろという感じで、クールに言われました。


    そのプリントアウトした紙を見ると、よく知ってるショップでした。
    大型の店で、フィギュアやマンガDVD等々、中古、新品、古い物からなんでも置いてあって、店員さんがコスプレしているので有名なあそこでした。


    「はい、ここから歩いて5分くらいです。場所は〜」
    場所の説明をしようとすると、さえぎるように
    『後ろ付いてくから、案内して』
    と、短く言いました。
    それは、お願いする態度ではなく、決定事項を下僕に告げるような口調でした。
    僕は、正直、怒りよりもゾクゾクしていました。

    そして、あの映画のあの場面のように、”親方、空から女の子が!!”と、叫びたいような気持ちでした。
    何か、ワクワクすることが始まった! そんな気持ちでした。

    「わかりました。付いてきて下さい」
    僕はそう言って、彼女の前を歩き始めました。
    それと同時に、スケジュールを思い出していました。フィギュアスケートの試合のスケジュールは、ほぼ頭に入っています。
    ユリアが何をしに日本に来たのか、推測が始まりました。

    今は、シーズンオフなので、試合もないはずです。
    エキシビションか、、、
    ここで思い出しました。

    うろ覚えですが、日本のテレビ番組に出る予定があったはずです。
    収録がてら、観光かな?
    そう思いながら、真っ直ぐショップを目指します。
    すれ違う人達が、ガン見する感じです。
    秋葉に集う人間に、ユリアはアニメキャラのように神々しく映るはずです。
    二次でもスゲぇと、、
    僕は、ユリアと気づかれないか、ドキドキでした。
    多分、バレたらパニックになる、、、 そんな気がしました。


    それは彼女も感じたようで、人が増えてくると、サングラスと帽子をしました。
    これだけで、かなりわかりづらくなりました。
    その上、彼女は黙ってると、プンプンオーラが出てるので、怖くて声をかけられないと思います。


    僕は、不思議な気持ちでした。
    あのユリアを先導している。そう思うと、テンションが上がりまくります。
    でも、話しかけることも出来ず、それどころか、振り返ることすら出来ずに、足音だけを頼りに、彼女がついてきていることを確認します、、、


    そうこうしているうちに、あっけなく、何もイベントが起きないまま、なんのフラグも立たずにショップに着きました、、


    「ここです。お疲れ様でした」
    案内して疲れたのは僕なのに、彼女のオーラに気圧されて、こんな事を言いました。

    すると、ユリアはニコッと笑って、
    『ありがとう』
    と、一言だけ言いました。

    その冷たい氷のような顔が、笑顔になっただけで、魂を奪い取られる感じでした。
    もともと、2番目に好きなスケーターでしたが、この瞬間、一番好きになりました。
    好きになったと言うよりも、恋に落ちた感じでした、、、

    「ど、どういたしまして」
    ドモリながら答えて、会釈をしてその場を去ろうとしました。
    すると、後ろから、シャツの裾を引っ張られました。
    『なんて書いてあるか、通訳して』
    と、またお願いではなく、決定事項の通知という感じで言われました。

    僕は断ることも出来ずに、それどころか、嬉しいと思いながら、
    「喜んで!」
    と、力強く言いました。

    その僕の言い方に、ユリアはフッと軽い笑みをこぼしました。
    もう、この笑顔のためなら、なんでも出来る!! そう思うほどの破壊力でした。


    彼女は、テレビで見るよりも、背は小さく感じます。でも、体つきは、きゃしゃではありませんでした。
    さすがにアスリートというか、筋肉を感じる体つきでした。
    そして、意外に胸があることに驚きました。それほどデカくはないですが、イメージよりは大きいです。
    テレビやネットで見る彼女は、ぺったんこなので、成長期で育ったのかな? 
    それとも、試合中はさらしでも巻いているのかな?と思いました。


    僕は、今度は逆に彼女についていきます。
    彼女は、フィギュアコーナーを見て、ハガレンのところで足を止めました。
    そして、サングラスを外して、熱心にショーケースの中を見始めます。
    本当に、鋼の錬金術師は外国でも人気なんだなぁと感心しました。
    エド推しかな?と思っていたら、まさかのブラッドレイ推しで、熱心にフィギュアを見て、僕に価格とか、ポップの文章を翻訳させました。

    マスタングも好きなようで、嬉しそうに見ています。
    と言っても、顔は笑顔ではなく、相変わらず冷たく感じるほどの美しさのままでしたが、目が笑っています。

    やっぱり、まだまだ子供なんだなぁと、少し安心しました。

    そして、5つほどフィギュアを買いました。
    包んでもらっている間、僕をレジに残して、店内を見回りに行くユリア。
    ちょっと心配でしたが、ここにいるお客さん達が、ユリアに声をかけられるとは思えないので、まぁ大丈夫かと思いました。



    そして、包装が終わり、ユリアを探すと、奥の古い物が置いてあるコーナーにいました。
    熱心に見ている彼女は、さっきハガレングッズを見ているときよりも、はっきりとした笑顔です。
    無邪気に、年相応のこぼれんばかりの笑顔で見つめるその先には、コロ助の目覚まし時計がありました。

    へぇ、、 コロ助好きなんだ、、 と、ちょっと驚きながら後ろに立ち、声をかけました。
    「コロ助、好きなんだ?」
    すると、彼女は驚いた顔で振り返り、美しい白い顔を少し赤らめながら
    「な、何それ?知らない。終わったの? じゃあ、行くよ」
    と、動揺しながら僕のシャツを掴んで、引っ張っていきます、、

    頬を赤らめて、慌てている彼女。
    人間らしいところを見た感じです。氷のように見えても、やっぱり女の子なんだなぁと思いました。


    店を出ると、彼女が僕のシャツから手を離しました。
    あぁ、終わってしまった、、、 でも、彼女の色んな一面が見られて良かった、、 本当にラッキーだった、、 そう思っていると、
    『お腹すいた。ソバが食べたい』
    と、ユリアが言いました。また、冷たい感じの、通知口調でしたが、僕は嬉しくなりました。

    まだ一緒にいられる上に、食事まで出来る!!
    小躍りしそうでした。
    そして、秋葉では有名なソバ屋に連れて行きました。
    ユリアは、珍しそうに店内を見回しています。

    そこで僕は行動に出ました。おそらく、このまま何もしなかったら、ただのガイドで終わるはずです。さして記憶にも残らないはずです。

    僕は、注文を終えると、ちょっと待っててとユリアに言い、ダッシュでさっきのショップに戻り、コロ助の目覚まし時計を買いました。


    そして戻ると、彼女はもうソバを食べていました。
    僕を待つことなく、食べている彼女。
    僕が戻っても、チラッと見るだけです、、、

    彼女は、音を立てないように、慎重ににすすっています。
    僕は、
    「ソバは音を立てて良いって言う日本のルールだよ」
    と、教えました。
    彼女は、ちょっと目を大きく開けて、驚いたという顔をしたあと、それでも僕を真似て、ソバをすすりました。

    最初は少し気にしながら、恥ずかしそうにすすっていましたが、だんだん慣れてきたようで、普通の日本人みたいに食べ始めました。

    そして食べ終えて、そば湯を注いであげると、珍しそうに、不思議そうに飲みました。
    「美味しい! このスープ、何?」
    と、聞いてきました。
    説明すると、感心したようにうなずき、飲み干しました。
    そして、僕が飲んでいるのを、僕の手から奪い取り、飲み干しました。
    僕は、ドキドキしてたまりませんでした。 間接キス、、、 そんな言葉が頭を巡りました。


    そして、それも飲み干すと、”美味しかった”と満足そうに言いました。

    そして、僕はこのタイミングで、コロ助が包まれている袋を渡しました。
    「なに? くれるの?」
    あまり関心がなさそうに言うユリア。

    無造作に、つつみを破っていきます。
    すると、コロ助の外箱が見えてきて、ユリアは一瞬で全開の笑顔になりました。
    そして、ニコニコしながら、箱から取り出します。
    黙っていると、冷たい氷のような彼女が、太陽のように無邪気な笑顔でコロ助をいじくり回します。

    ”朝なりよ! まだ眠いなりか? 遅刻するなり!!”
    コロ助が、そう叫びました。
    すると、もっと笑顔になった彼女が、
    『なんて言ったの?』
    と、聞いてきました。

    通訳して教えると、片言で
    『チコクゥスルゥナリィ アサァ、ナリィィヨォゥ』
    と、何度も繰り返します。

    僕は、その姿を見て、心から幸せでした。ユリアのこんな姿が見られた、、 ラッキーという言葉では足りないくらいです。

    「プレゼントだよ。世界選手権銀メダル、おめでとう」
    僕はそう言いました。
    『あ、ありがとう、、  もらっといてあげる』
    そんな言い方をしながらも、照れた感じで、ずっとコロ助を触り続けています、、、

    なまじ黙ってると、氷の女王様のような感じなので、今のこの可愛い仕草とか、照れた感じがたまらなく可愛いと思いました。

    僕は、多分少しニヤけながら見ていたのだと思います。
    『名前は?』
    急にユリアが聞いてきました。僕は、今さら?とも思いましたが
    「ユウだよ」
    と言いました。
    『ユヅルじゃないんだ、、 ホント、似てる、、』
    ユリアは不思議そうな顔で、ボソッと言いました。
    自分では、そんなに似ているかな?と思うのですが、ロシア人にはそっくりに見えるのかも知れません。

    「ゴメンね、似てて、、 やっぱり、本当に好きなんだ?」
    僕は、ネットでの噂をストレートで聞きました。
    彼女は、ネットにあげられた彼とのツーショット写真に、わざわざ”いいね”しているそうなので、相当好きなんだろうなと思います。噂では、プーチンとの写真には”いいね”しなかったそうです、、、

    『な、なに言ってんの? バカじゃないの!』
    顔を真っ赤にして強がる彼女、、 透けるような白い顔が、本当に笑ってしまうほど赤い顔になっています。
    僕がそれを見て笑っていると、急に真顔になって、黙って見つめられました。
    彼女が黙って見つめてくると、その青い瞳に吸い込まれそうになり、ちょっと怖くなりました。

    「ご、ごめんなさい、、 これから、どうするの? ホテルまで、帰れるの?」
    僕は、そう聞きました。
    『浅草寺に連れてってくれる?』
    ユリアは、それには答えずに、短く言いました。
    「え?あ、あぁ、いいよ、行こう!」
    僕は、予想外の言葉に驚きましたが、嬉しくて仕方ありません。

    会計を済ませて、店を出ました。
    そして、つくばエクスプレスの駅に向かいました。
    駅が近くなると、すごい人混みになってきて、ユリアは驚いているようでした。
    もしかして、これだけの人混みはロシアにはないのかな?と思いながらも、少し足を緩めると、ユリアが手を繋いできました。

    小さな可愛らしい手で、僕の手をギュッと握る彼女。不安そうな感じが伝わってきます。
    僕は飛び上がりそうなほど嬉しかったです。
    まさか、あのユリアと手を繋いで街を歩けるなんて、想像したことすらありませんでした。


    僕は、そのまま手を引っ張り、電車に乗りました。
    そして、浅草寺や浅草を色々と観光しました。
    浅草寺で、香煙を”良くしたいところに塗り込むと、良くなる”とか教えてあげました。

    ユリアは、ふ〜んとか言いながら、”変なの”と、興味なさそうに言いましたが、僕が頭に香煙塗りながら、”頭が良くなりますように”と言うと、笑っていました。

    そして彼女が、僕が見ていない隙に、慌てて胸に塗り込んでいるのを見逃しませんでした。
    やっぱり、胸は大きくしたいモノなんでしょうか? 
    競技には邪魔になる気がしますし、彼女のキャラクターには、貧乳のほうが似合う気がします。


    もう、何時間も一緒にいて、彼女のことがわかってきました。
    彼女が冷たく感じるのは、笑顔と真顔のギャップが強すぎるからで、彼女自身は別に冷たい人間ではないということ。
    黙っていると、大人びて見えるけど、中身は無邪気な子供ということ。
    そんな事がわかってきました。

    そして、彼女も僕に慣れてきてくれたみたいで、ニコッと笑いかけてくれるようになっていました。
    もう、まるっきりデートのような感じです。
    僕は、この短時間で、一生分の運を使い果たした気持ちになりました。


    そして、日も落ちて、辺りも暗くなってきました。
    「じゃあ、そろそろ帰った方がいいよね? 同行の人も、心配してるんじゃないの?」
    僕は、まだ一緒に過ごしたい気持ちを押し殺して、大人としての意見を言いました。

    『ユウの家は近いの?』
    ユリアは、また僕の話を無視してこんな質問をしました。
    「え? あぁ、近いよ。歩いても、20分くらいだよ」
    『じゃあ、ちょっと見せて。日本人の部屋、見てみたいから』
    ユリアは、とんでもないことを言い始めました。
    僕の部屋に来る? ユリアが!? 今まで、女性は誰一人来たことのない僕の部屋に!?

    ちょっとパニクりました。
    でも、ユリアも微妙に緊張している感じです。
    僕は、
    「いいけど、狭いし、散らかってるよ」
    と念を押しました。

    『どっち? 行くよ』
    ユリアは、また僕の言葉を無視して、勝手に歩き始めます。
    「ち、違う、こっち、こっちだよ!」
    慌てて声をかけて、方向を修正します。
    すると、また僕の手を握ってきました。
    『早く言いなさいよ。はい、出発』
    冷たい目で言うユリア。また、僕は気圧されながら
    「は、はい、ゴメンなさい」
    と、謝ってしまいました。

    すると、今までと違って、ユリアがニコッと笑いながら
    『そんなしゃべり方しないでいいよ。友達と話すみたいにして』
    と、言いました。
    僕は、この年下の美少女に、翻弄され続けています。でも、それが楽しいとも思っていました。

    そして、彼女と手を繋いで、歩き始めました。
    恥ずかしい話ですが、僕はこの歳になるまで、女性と手を繋いで歩いたことはありませんでした。
    当然、デートもしたことがなかったので、初デートの相手がユリアということになります。

    道案内だけだと思っていたのに、本当にワクワクするようなことが始まった感じです。
    いきなり始まった非日常。ユリアはもしかして飛行石のネックレスをしているのではないか?などと、下らない妄想が広がります。


    どっぷりと妄想に浸っていたら、急に手を引っ張られました。
    慌てて足を止めると、ユリアは、
    『あそこに行きたい』
    と言って、そちらに歩いて行きます。
    すべての決定権は、彼女にあるという感じですが、こういうのは嫌いじゃないです。それどころか、弱気な僕は引っ張ってもらう方が好きかも知れません。


    彼女が興味を持ったのは、コンビニでした。
    中に入ると、色々なお菓子を手にとって、不思議そうな顔をしたり、ニコッと笑ったりしながら、どんどんと手に取ったかごに突っ込んでいきます。

    そして、ちょっとした小物というか、オモチャ的なグッズにも興味を示し、アンパンマンのヤツや、プリキュアのものをかごに入れました。
    やっぱり、こう言うのを見ると、見た目はクールでも、中身はただの女の子だなぁと思いました。


    そして、彼女は500円クジにも目をつけました。たまたまサンリオ系のヤツだったので、猛烈に興味を示し、商品をかごに突っ込もうとしました。
    慌てて止めて、それはクジだという説明をしたら、頬を少し膨らませて、不満そうな顔をしました。
    そんな表情をしたのは、テレビでもネットでも見たことがないので、腰が砕けそうなほど萌えました。

    そして、レジで会計をして、クジを引きました。
    こう言ってはなんですが、世界レベルのアスリートは、やはり非凡な存在なんだと思いました。一発で、さっきかごに入れようとした商品を引き当てました。
    彼女は、ロシア語で叫びながら、その場で飛び上がりました。
    店員のおばさんも、良かったねぇ〜などと言いながら、商品をバーコードリーダーに通し、ユリアに渡してくれました。

    ユリアは、袋はいらないと手で制し、その大きめのぬいぐるみを抱きかかえます。
    ぬいぐるみを抱えて、ニコニコしている彼女は、本物の天使に見えました。

    そして、上機嫌な彼女は、ぬいぐるみを抱えたまま、僕の手を握ってきました。
    書き忘れていましたが、彼女の大きめのカバンは、最初の段階で、当然のように僕が持たされていました。あまりに自然に、当然のように僕に持たせたので、持つのが当たり前と思っていました、、、


    そして、僕の家に着きました。
    ごく普通の1Kのマンションです。
    ユリアには狭いと言いましたが、駅から少し遠いのと、若干古いので、居住スペースは35くらいあり、そこそこ大きめです。

    でも、ユリアは部屋に上がると、
    「部屋はこれだけ?」
    と、驚いた感じでした。
    ロシアの住宅事情は知りませんが、1Kという間取りが不思議なようです。

    彼女は僕のフィギュアの棚や、マンガ、DVDの棚を興味深そうに見ています。
    そして、ハガレンのDVDを見つけると、再生しろと言いました。

    僕の部屋には、ソファなんてありません。自然に、二人並んでベッドに腰掛けて、DVDを見ることになりました。

    僕は、コップなどを持ってきて、緊張しながら彼女の横に座ろうとすると、彼女が慌てた顔で、少し横にずれました。
    僕も、そんなにくっついて座ろうとしたわけではないのですが、かなり距離を開けられました。
    まぁ、初対面の男性の家に上がったのだから、無理もないなと思って、そのまま座りました。


    そして、テーブルのリモコンを取ろうとして、少し体を動かしたら、彼女がアスリートの機敏さで、立ち上がりました。
    『な、なに!?』
    彼女は、驚くというか、ちょっと不安そうな顔で僕に言いました。
    「え?あぁ、、その、リモコンを、、」
    僕が説明すると、
    『あ、あぁ、そう、、 ビックリさせないでよ!』
    と言いながら、また座りました。


    部屋に入ってから、彼女のキャラが変わりました。
    勝ち気でクールな感じの女王様。そんな感じだった彼女が、か弱い小動物みたいな感じになっています。

    ずっとスポーツ漬けだった彼女は、もしかしたら男性に慣れていないのかも知れない、、、
    そう思いました。

    とは言っても、二人きりでベッドの上に座っている状況でも、僕は何も出来ないと自覚しています。


    そして、僕のそんな弱気を理解したのか、ユリアも緊張が解けてきたようです。
    さっき買ったお菓子を食べながら、DVDを鑑賞しました。

    彼女は、たこ焼きを作る駄菓子みたいなのを、興味深く作っていました。
    水を混ぜて、型に入れてこねて、ソースをかけるだけなのですが、目をキラキラさせながらやっています。
    そして、完成すると、無造作に僕の口に近づけました。

    まさか、こんな風に食べさせてもらえるなんて思ってもいなかったので、メチャ嬉しかったです。
    パクッと食べて、美味しいと大げさに言うと、ニコッと笑ってくれました。
    そして、自分も食べて、
    『美味しい』
    と、僕に笑いかけました。


    なんか、恋人になった気分です。
    彼女は、僕が買ってあげたコロ助を取り出しました。
    ニコニコとしながら、撫でています。
    すると、自分のカバンからサインペンを取り出して、裏側の足の部分に
    『ここに、ユウの名前書いて』
    と、ぶっきらぼうに、照れた感じで言いました。

    この子は、本当にギャップがたまりません。
    乙女と、女王様が、コロコロ入れ替わります。


    僕は、漢字で名前を書きました。すると今度は、シールとか色々と貼ってある可愛らしいノートみたいなものを取り出して、真っ白なページを開きながら
    『メールアドレス』
    と、僕の方を見ずに、一言だけボソッと言いました。
    彼女の横顔を見ると、耳まで赤くなっています。
    僕は、本気で惚れました。

    有頂天でメールアドレスと、携帯番号も書いてみました。そして、facetimeもやってると説明しながらノートを返しました。


    すると、彼女がカバンから小さなポシェット?みたいなものを取り出し、キッチンの方に行きました。
    トイレかな?と思って、黙って待っていると、僕のiPhoneに着信がありました。
    見ると、facetimeで、見たことのないアドレスからでした。
    出ると、ユリアが映りました。
    彼女は、画面の中でニコッと笑うと
    『登録しといてね』
    と、上機嫌で言ってくれました。


    そして、すぐに部屋に戻ってくると、僕に太ももが触れるくらいの近さに座りました。
    僕は、一気に緊張しました。

    緊張しすぎて、ユリアの方を一切見られなくなりました。
    こんな緊張しながらDVDを見たことはありません。

    すると、今度は彼女の頭が、僕の腕に当たりました。
    彼女が、僕に体をもたれさせてきました。
    彼女の良い匂いがして、クラクラしてきました。


    鈍い僕でも、これはOKのサインだとわかります。
    でも、悲しいかな、経験がないのでどうして良いのかわかりません。


    あの憧れの天使が、すぐ横にいて、OKのサインを出している。
    心臓が体から飛び出しそうなくらい早く脈打っています。


    そんな情けない僕ですが、彼女はさらに僕の手を握ってきました。
    彼女の手は、汗ですごく湿っていて、微妙に震えている感じでした。
    僕は、やっと気がつきました。彼女も、勇気を持って頑張ってくれていることに、、、


    僕は、逮捕されて、国際問題になっても後悔しないと決意して、思い切って彼女にキスをしました。

    彼女の方を向き、顔を彼女の顔に近づけていきます。
    悲鳴を上げられて、逮捕される自分を強く想像しながら、勇気を奮い起こして顔を近づけると、奇跡が起きました。
    彼女の方も、すっと目を閉じて、顔を持ち上げてくれました。

    こんなにも美しいキス待ちの顔は、映画でも見たことがないです。
    ただただ美しい。吸い込まれるように唇を重ねると、彼女がビクッとなりました。
    僕は、それに驚いて、慌てて唇を離そうとしましたが、彼女がガシッとしがみついてくれました。

     

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