【彼女と】明日を見つめて 1.告白 【彼氏】 オナネタ専用エッチな体験談

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    【彼女と】明日を見つめて 1.告白 【彼氏】


    ある一人の男とその半生にかかわった人たちの実話を
    ベースに構成した物語です。
    登場する人物が特定できないように、複数の人格が
    一人の人物として集約されたり、一人の人格を複数の
    人物として登場させたりしています。
    大筋を変えることななく、出来事の背景は脚色してあります。
    かなり長くなりそうなので、読んだ方の反応、コメントを
    見ながら続編をアップするかどうかを判断させて頂きます。
    (筆力のなさは、ご容赦ください)
    ****************************************************

    高校の卒業式。式典も終わり、一同は、教室に戻った。
    級友たちは最後の時間を惜しみ、それぞれに3年間を懐かしく
    振り返っておしゃべりをしていた。
    喧噪の中、感慨深く見守っている生徒の保護者たち。

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    生徒たちそれぞれには、担任の先生から今後への『はなむけ』の
    言葉が伝えられ、ひとしきり感傷に浸った後、保護者たちは先に
    校舎を去り、生徒たちはそれぞれに仲の良かったグループ毎に
    帰途につこうとしていた。

    佐藤浩平も悪友たち3人と駐輪場の方へ向かいながら、これから
    どうするかを話し合っていた。
    この時代、大学入試はセンター試験どころか、共通一次もまだ
    行われていない。多くの私大の一般入試は、ほぼ2月に集中し、
    国公立大の入試が3月に行われていた。浩平も含め、ここにいる
    級友たちは、全員がそれぞれに志望していた私大に合格を勝ち
    取っていた。

    「さあて、どうすっかね。まっすぐ帰ってもしょうがねえし」

    「久しぶりに4人揃ったし、ここは麻雀だろ」

    「だな。それぞれ進学する大学も場所もバラバラだし、
     集まって麻雀ってのも、夏休みで帰省したときくらいに
     なっちゃうしな」

    「じゃあ、とりあえず一旦帰って、浩平ん家に集合でいいな」

    「ああ。じゃあ何か食い物と飲み物でも持ってきてくれや」

    「ほいよ。かかった金はいつも通り勝ったもん払いってことで」

    それぞれが家路につき、佐藤浩平も自転車のペダルに足を
    かけた時、後ろから呼びとめられた。

    「佐藤さん!!」

    「んっ?」

    振り返ると、女生徒ふたりが浩平の方に向かって歩いてくる。
    ひとりは背が高く、すらりとした子で、まっすぐに浩平を見つめ、
    隣の子の背中を軽く押している。良家のお嬢様という雰囲気が
    あり、品のいい顔だちをしている。
    もうひとりの子は、恥ずかしそうに友達に背中を押されながら、
    たどたどしく、なんとか歩いているという感じである。
    背格好はまあ平均的な女子高生。ちょっとだけスレンダーか。
    伏し目がちの顔からでも、整った顔立ち、可愛さが際立っていた。

    浩平は、自転車から降りて、女の子たちの方に向きなおった。
    背が高い方の子が声を掛けてきた。
    「はじめまして・・・ですよね。
     知らない私たちから突然呼びとめられて、驚きますよね。
     ごめんなさい。
     さあ、晴香、ちゃんと自分から言わなきゃ」
    浩平は、この期に及んでも状況が呑み込めていない。
    「?」
    晴香と呼ばれた子は、頬を赤く染め、少し震える声で何とか
    話し始めた。

    「あの、あの。佐藤さんの、その、第二ボタンを下さい!」

    「え!?」

    背の高い子が、見かねて助け舟を出す。

    「この子、斎藤晴香って言いますけど、ずっと佐藤さんのことが
     好きで。
     何度も『告白すれば?』って言ったんですけど、結局、何も
     言いだせずに今日まで・・・。
     それで、最後の日だからって私が無理に連れて来たんです。
     様子を窺ってたら・・・。あ、勝手にごめんなさい。
     誰にもボタンを取られていなかったんで、せめて思い出に
     貰っておけって焚きつけたんです」

    「はぁ・・・」

    「あっ、失礼しました。私の名前は」

    「えっと、北島彩さん。・・・ですよね!? 確か、B組の委員長」

    彩は驚いた。
    「えっ、私たちのこと、ご存じだったんですか!?」

    「正直に言うと、よくは知らないんだけど。
     3日ほど前にうちの、C組の立花先生の家に泊りがけで遊びに
     行ってね。ほらあの先生、カメラが趣味なんで、校内の生徒たち
     のスナップを大量にスクラップしているんだよね。
     で、出してくれた酒を飲みながら写真を見せてもらって、同学年
     の女子のことをいろいろと聞かされて・・・。
     その時に、北島さんの写真もあったし、どれも斎藤さん・・・だった
     よね?二人で一緒に写っていたから」

    「そうだったんですか・・・」

    「まあ、北島さんは委員長だったこともあって、以前から名前と
     顔だけは知っていて、・・・斎藤さんのことは、それまでは知ら
     なかったけど。
     そしたら、立花先生が、『校内男子の一番人気の子だ』って。
     ごめんね。俺はそういうこと全く疎かったんで、斎藤さんだけ
     じゃなく、校内の女子って、同じ中学校から来ていた子以外は、
     誰が誰なのか全然知らなくて。
     うちのC組は3年間、男子だけのクラスだったからなおさら・・・。
     でもね、立花先生から聞いた評判と、写真を見て、確かに
     飛びぬけてきれいな斎藤さんのことが気になったんで、
     情報通のクラスの奴に確かめてみたら、『知らないのお前
     くらいじゃないの? 俺もひそかに憧れてたし』って。
     今日まで話す機会も持てなったは残念だったね」

    晴香が、残念そうに聞いてきた。
    「うちの女子に興味がないのは、他の高校に彼女さんがいる
     からですか? だから・・・」

    「いや、勘違いしないでね。うちの女子や他校の女子もなにも、
     俺、まるっきりもてないんで・・・。
     それなりに片想いもあったけど、一方的なものだったし。
     恥ずかしいけど、これまで付き合った女の子のひとりも
     いなかったから。
     男友達とわいわい騒いでいるだけで充分が楽しかったしね。
     だから、女の子にもてなくてもあまり気にならなかったって
     いうか・・・。あはは、負け惜しみだね・・・。
     斎藤さんの申し出は、正直うれしいし、ボタンなんか全部
     あげても困るわけじゃないからいいんだけど・・・にしても・・・。
     スポーツもできない。ドジで不器用。何の取り柄もない俺の
     どこが・・・?」

    実際、浩平は未熟児であったことが影響してか成長が遅く、
    背丈や運動能力がやっと人並みに追いついて来たのが中学生
    になってからだった。
    高校に入る頃には背丈はごく平均的な身長になってはいたが、
    虚弱で、痩せていて、顔色も悪かった。
    筋力や瞬発力には問題がなく、短距離走や短距離の競泳など
    は、むしろクラス内では上位に食い込むこともあったが、
    中・長距離走や中距離以上の競泳など、持久力を要する競技・
    スポーツは、からきし苦手だった。スタミナが続かないのである。
    容貌は、「ハーフなのか?」と言われるような顔つき。
    鼻筋が通り、二重瞼で瞳の色素も薄く茶目。初対面の人からは
    神経質そうに見られる。
    深い思考に入った時や激怒した時などは、近くにいた人に
    怖がられるほど鋭い目つきになるが、それ以外に普段他の人と
    接する時は、実に柔和な目をしていた。
    性格も争いを好まず、いたって穏やかである。
    耳が隠れるくらいのウェーブのかかった半長髪は、手入れをする
    でもなく、ヘアブラシで簡単にかき分けているのみ。
    彼にとっては、それらのバタくさい顔つきや虚弱な体質など、
    全てがコンプレックスになっていた。
    ファッションには全く無頓着。可愛がってくれていた2歳上の従姉
    が見かねて「浩平も少しは着るものに気を遣いなよ」と、選んで
    くれた服をそのまま、何の不満も抵抗もなく着ているような男で
    ある。

    呆れたように彩が口をはさんだ。
    「佐藤さんの自覚がないだけっていうか・・・。
     うちのクラス、佐藤さんの噂でもちきりだったんですよ。
     でも、そういう異性に淡白なところがクールに見えて、
     よけいにみんな気になっちゃうんだろうな・・・」

    浩平はもっと話したかったし、ときめくものを感じてはいたが、
    時間がない。
    「んーっ。残念だけど、今日はこれから、ほら、
     さっき一緒だった悪友たちと約束があってね。
     俺ん家に集合なんで・・・。
     もし、よければだけど、明日の夕方にでももう一度会って、
     話が出来ないかな。
     本当は日中がいいんだろうけど、奴らとの付き合いは
     夜通しになりそうなんで・・・」

    晴香の表情がパっと明るくなった。
    「わっ、嬉しい! もちろん、大丈夫です。彩も、いいよね!」

    「何を言ってんの? ずーっと片想いで告白も出来ずにいた
     憧れの人が、せっかく二人で会える機会をつくってくれるって
     いうのに・・・。
     私がのこのこついて行くわけにはいかないでしょ!」

    「あぁ、そんなに堅苦しく考えないで。
     じっくり話してみれば『なんだ、こんな男か』と、がっかりする
     だけだから。
     仮にこんな俺でもいいって思ってくれても、もう3週間後には
     こちらを離れるし、思い出はひとつでも多い方がいいでしょ、
     お互いに。
     だから、もし良ければ北島さんも一緒に。
     俺も誰か一人連れていければいいんだけど・・・。
     男子憧れの二人と会うなんて言ったら、あっと言う間に他にも
     悪友共がおしかけてパニックになりそうだしね」

    「そういうことなら、私もお邪魔しちゃおうかな・・・。
     晴香、いいの?」

    晴香はコクコクと頷いている。

    「斎藤さん、家はどこなの?」

    「あっ、日ノ出町です。彩も近くです」

    「日ノ出町なら・・・一軒だけ喫茶店があったよね」

    「はい。『ほのか』ですよね」

    「そうそう。それじゃ、そこに4時半でいい?」

    「はい」

    「それじゃ、よけいな一人も楽しみにしてます」

    「なにもよけいなことないって。
     じゃ、晴香ちゃん、その時にボタンも持っていくね。
     おっと、何か都合が悪くなった時には家に電話して」

    浩平は急いで自宅の電話番号をメモした紙片を晴香に渡した。

    「ありがとうございます」

    「ありがとうじゃなくて、晴香のも渡さなきゃ!」

    「あっ、そうでした」
    晴香は、可愛い猫のキャラクターが描かれたメモ用紙に
    電話番号を書いて浩平に渡した。
    まだ、携帯電話など世に出ていない時代である。
    電話と言えば、お互いの自宅の固定電話にかけるしか
    なかった。

    「それじゃ。楽しみにしています。急いでいるときにごめんなさい」

    二人と別れて自転車で家路に急いでいた浩平は、担任だった
    立花の自宅で見た写真やその時の立花の話と、今日の二人の
    印象に思いを巡らせていた。
    晴香は確かに可愛い。恥ずかしさが薄らいで素に近い状態に
    戻った顔立ちは、整っていながらも、きれいな女性にありがちな
    冷たさも感じず、表情には愛らしさがある。
    眉の太さに意思の強さを感じさせるが、こればかりは、実際の
    ところは分からない。
    あの顔立ちは、確かに男のハートを鷲掴みにしてしまうだろう。
    プロボーションも若干細身の体に、けして大きくはないが均整の
    取れた健康的な胸や腰つきをしていた。
    テレビやグラビアで活躍するアイドルと比較しても遜色がない。
    男どもが騒ぐのも頷けた。
    残念なことに、その騒ぎにさえも俺は取り残されていたわけ
    だが・・・。

    対して彩は、まず背が高い。165cmは、あるんじゃないか?
    ハイヒールなんて履いたら、172cmという、男としてはごく
    標準的な俺の背丈と並んでしまいそうだ。
    晴香と比べても随分とスリムな体形である。
    まあ、そこは55kgと痩せ過ぎの俺に合ってはいるか・・・。
    もっとも彼女にしてみれば、俺とつり合うことなど考える必要も
    ないのだが。
    若干面長の顔は、じゅうぶんに平均レベル以上。いや、かなり
    高いランクだろう。晴香と並んでいることで、だいぶ損をしている。
    肩の先まで延ばしたストレートヘアも顔や体形にマッチして、
    全体に控えめで、自己主張し過ぎない雰囲気・・・そう、
    「清楚」という言葉がピッタリか。
    細い体に・・・胸もないが、俺は別に巨乳好きなわけではない。
    委員長をやっていただけあって、言葉遣いや態度もきちんと
    しているし、言いたい事が相手にきちんと伝わる話し方をする。
    晴香と比較すると、姉のようにも見えるほどしっかり者という
    ところか。
    まあ、晴香の場合は、どこがいいんだかはさておき、俺が好き
    だということで、やっとの思いでそれを伝えようとしていたわけ
    だから、今日のあのシャイな姿は、普段の彼女から割り引いて
    見てやらなきゃいかんのだろう。

    この時点では、浩平は彩の方に魅かれ始めていることに
    気づいてはいない。

    ---------------------------------------------------

    浩平の家では、彼女を持たないむさ苦しい男どもが4人。
    浩平の両親が帰って来るまでは麻雀に興じ、その後、皆で
    夕食を摂ってからは浩平の部屋に籠ってトランプをしたり下らぬ
    話を明け方まで続けていた。
    彼女たち二人の話は、誰の口からも出てくることはなかった。
    浩平同様、悪友3人も類は友を呼ぶで、女の子に当たり前の
    興味はあっても、皆『おくて』というか、意中の子はいても告白
    するなど飛んでも8分、歩いて10分。
    気の合う男友達と群れて、楽しく騒いでいるだけで満足して
    しまう連中ばかりなのである。
    どいつもおそらく、縁があって女の子と付き合うことになれば、
    お互いに祝福し合うであろうほど気のいい連中ではあるが・・・。

    あの二人の子を意識していなかったのは、さすがに浩平だけ
    だったということは、随分後に開かれた同級会での会話で
    分かったことである。
    浩平以外の3人もまた、特に晴香には大いに憧れを抱いていた。
    高嶺の花と、口にも出せずにいただけで。

    ---------------------------------------------------

    約束の時間の10分前には、浩平は『喫茶 ほのか』の前に
    自転車を止めた。
    浩平が
    店の前を自転車で通る姿を、彼女たち二人は窓際の
    テーブルで、窓とは反対側の席に座って通りを眺めていた。
    晴香が、笑顔で手を振っている。彩がにっこり微笑んでいる。
    彼女たちを横目に視認して、浩平も軽く手を挙げた。

    初めての告白を受けた女の子と、その親友に会いに来たと言う
    割には、浩平の心は落ち着いていた。
    地元にいられるのは、あと20日しかないのである。
    晴香がこれから、どこでどう過ごすのかを聞いてはいなかったが、
    浩平が地元を離れれば、そう度々会えるような状況にはない。
    であるならば、彼女がこれから浩平と初めて交わすプライベート
    な会話の過程で、彼女が抱いていた浩平への感情が間違い
    だったと気付き、このまま「さよなら」でも、浩平にとっては
    束の間にせよ、自分に好意を抱いてくれた子の存在を知った
    だけでも、これからの人生に大きな自信になるし、いい思い出
    にはなる。
    よもやあるまいとは思いつつ、晴香がその好意を膨らませる
    ようなことがあれば、これからどうお付き合いしていけばいい
    ものか・・・。かえって戸惑うだろう。
    女の子と付き合った経験もない浩平には、そちらの方が見当が
    つかない。

    大学入試の合格発表が終わってから、それまで女性に縁の
    なかった浩平にも、運転免許教習所やら、何かのイベントやら
    で同世代の卒業を目前にし、進路が決まった解放感を共有する
    女の子と偶然に知り合い、意気投合して一緒に映画を観たり、
    お茶を楽しんだりという機会が何度かあったが、全てが恋愛
    感情には発展しようもない、お互いにその場限りと割り切った
    ものだった。
    その場だけのものだからこそ、いわゆる「体目当て」の関係を
    漁るような感覚は、浩介は元来持ち合わせてはいない。
    そして、この『喫茶 はるか』での晴香と彩との出会いが、
    この後の浩平の人生に大きな影響をもたらすことなど、この時は、
    知る由もなかった。

    「ごめん。待たせちゃったね」

    彩が応じた。
    「いえ。私達も待ち合わせて今、着いたところですから」

    浩平は、空いている窓際の席に腰をおろす。
    すぐにウェイトレスが注文を取りに来た。

    「えっと、二人は仲良く紅茶なんだね。 俺は、コロンビアを。
     さて、忘れない内に。はい、約束のボタン」

    浩平は、5つのボタンをテーブルの上に並べて置いた。
    いたずらな目で、晴香に向って言う。
    「さあ、どれが第二ボタンでしょう?」

    「え!? そんなあ、分からないですよぉ・・・」

    彩が口を挟む。
    「せっかくだから、全部貰っちゃえば?」

    「えぇっ、でもぉ・・・」

    「アハハ。実はこれでした」
    浩平は、ポケットからもうひとつ、小さな袋を取り出して、晴香に
    渡した。
    「その5つのボタンの内の一つは、予備用のボタンだよ。
     第二ボタンは、まとめて持っていたら自分でも分からなくなる
     から、真っ先に取って袋に入れておいたんだな」

    晴香は、嬉しそうにお礼を言って、その小袋を受け取った。
    彩は、浩平の顔をまじまじと見つめながら、『意外に・・・』という
    顔をした。
    「へえ、佐藤さんってこういうジョークもするんですね」


    「そりゃあねえ。
     二人の持っている情報をもとにした俺のイメージは、やっぱり
     現実とは随分違うんじゃない?
     だから言ったでしょ。
     じっくり話してみれば『なんだ、こんな男か』って思うよって」

    「いえいえ、逆ですよ。
     なんか、私には・・・というより、たぶん佐藤さんを見ていた
     ほとんどの子には、近寄りがたいイメージがあったんですけど、
     結構、くだけているっていうか・・・。面白い人だなあって。
     そうだ、せっかくだから、その残ったボタン、私が貰っちゃ
     おうかな!」

    晴香が文句をつける。
    「何で彩が佐藤さんのボタンを受け取るの?それ、おかしいし」

    「いいじゃない。私だって思い出づくりに晴香に付き合ってここに
     来たんだし。
     残ったボタンくらい、それくらいのご褒美があったって構わない
     でしょ!!」
    お互いに言葉の調子はきつくない。
    からかい、じゃれあっている感じである。

    「ボタンく・ら・いじゃないもん!」

    「まあまあ・・・。俺にとっては不用品だし。
     じゃあ斎藤さんにもあと2つ。
     北島さんには、残った3つ。
     ここには第2ボタンは入っていないから・・・ね!」


    なるほど。恋愛は時に、女の友情をもろくも崩してしまう・・・。
    この二人は違うな。雰囲気としては、仲のいい親友同士で
    じゃれあっているだけ。微笑ましい関係だな。などと、
    浩平は、他人ごとのように二人を観察していた。


    「ところで、斎藤さんたちは、地元に残るの?」


    「私は、市内の●●銀行です。だから、自宅から通います」

    「そっか。いいところに入れたね。
     実際、市内や県内で地場の優良企業に就職しようと思ったら、
     下手に県外の大学に進学してUターンするより、地元の高校を
     卒業してすぐに就職した方がよほど入り易いんだよね。
     ましてやうちの高校だったら指名が入るし。
     北島さんは?」

    「私は、○○女子大短期大学部の栄養学科です。
     学校推薦でしたから、12月には合格を貰っていました。
     佐藤さんは、東京の△□大でしたよね」

    「そう。ま、一応、経済学部だけど、将来何をやりたいかなんて
     まだ決まっていなくてね・・・。
     顔色や体形を見ればわかる通りで、体があまり強くないから、
     すぐに社会に出るのは心配だったようで、先生や親が進学を
     勧めてくれて。
     立花先生が、まあ何になりたいかも決まっていないなら、
     経済が一番潰しが・・・融通がきくぞって言うんで、ほんじゃあ、
     経済で無理せず入れる大学はどこかいなってんで決めた
     ようなもんだしね。
     優柔不断でしょ?
     斎藤さんは、銀行員。北島さんは、栄養士を目指して勉強か・・・。
     俺なんかより全然しっかりしてるよね」

    晴香は、興味津々と言った顔つきで聞いている。
    彩が口をはさんだ。
    「そんな・・・、まだまだ全然しっかりなんかしてないですよ。
     それに、△□大って、そんなに楽に入れるようなレベルでは
     ないですよね」

    「いや、それは一応俺達のクラスは進学コースだから、
     それなりに何とかなっちゃうもんで」

    浩平たちが通っていた高校はもともとが実業高校で、商業科と
    工業科が併設されていたが、浩平が受験をする年に普通科と
    いう名の進学コースが追加され、再編されていた。
    女子のみの実践商業科がA、Bの2クラス。
    この中のB組が晴香と彩のいたクラスである。
    浩平のいた男子のみの普通科がC組。
    D、Eの2クラスは、男女共学の流通商業科。女子の方が多い。
    F、G、Hの3クラスが工業科で、2年次から建築、電子工学、
    情報工学の3コースに分かれる。
    一応共学だが、ほとんどは男子である。
    面白いのは、普通科の生徒でも1年生の時は、選択科目として
    簿記や情報処理の科目を取れたところである。
    C組の進学実績が一定の成果を得たことで、明年には普通科が
    もう1クラス追加され、後に、「総合高校」という校名に変わり、
    大幅に再編されていくことになった。

    浩平は、運ばれて来たコロンビア・コーヒーに口をつけた。
    晴香が不思議そうに聞いてきた。
    「砂糖とミルクは入れないんですか?」

    「受験期にね、眠気覚ましに頻繁に飲むようになってから、
     砂糖は入れなくなったね。
     ましてや、ちゃんとした喫茶店で出してくれるそれなりの
     コーヒーは、砂糖なしでもじゅうぶんにうまいよ。
     今や、眠気覚ましじゃなくて、俺にとってなくてはならない
     ものだね」

    「甘いものは、好きじゃないんですか?
     それで、そんなにスマートだったり・・・」

    「アハハ、たぶん君たちと同じか、それ以上に甘い物は好き。
     だけど、コーヒーは別。太れないのは体質だよね」

    「へえー・・・。私、コーヒーは、砂糖なしじゃ苦くて飲めない
     ですよぉ」

    「それは、斎藤さんはまだお子ちゃまだということで!」

    「ひっどーい!! ま、でもその通りですけど・・・。
     食べても太らないって、いいですね」

    「うーん、俺としては、もうちょっと太りたいんだけどね・・・。
     北島さんは? やっぱりコーヒーは苦手?」

    「私は、紅茶派ですね。コーヒーは苦手ではないですけれど、
     あまり飲まないですね」

    「そっか、それは残念。紅茶も嫌いじゃないけどね。
     砂糖の話が出たところで、俺のこと『佐藤さん』って呼ぶの
     やめにしようよ。
     『佐藤』って、必ずクラスに3〜4人いるから、いつも名前で
     呼ばれるんだよね。
     何か『佐藤さん』って言われると軽く違和感が・・・」

    晴香と彩は顔を見合わせ、少しの間を置いて、彩が応えた。
    「じゃあ、『浩平さん』でいいですか?」

    「うーん、同学年なんだから呼び捨てでもいいんだけど、俺も
     二人のことを呼び捨てには出来ないし、それでいいことに
     しようか」

    晴香が言い、彩が続けた。
    「じゃあ、私のことも名前で。
     私もあまり苗字で呼ばれたことはないんで、『晴香』の方が
     いいです」

    「私も名前で呼ばれた方がしっくりします。『彩』でいいです」

    「了解。
     で、晴香ちゃん。本題だけど、俺に好意を持ってくれたことは
     ありがとう。
     正直、嬉しかったし、もっと早くに言ってくれていたら俺の方が
     舞い上がっていただろうと思う。受験も手につかなかったかも
     知れないね。
     でも、俺がこっちにいられる日数は、あと20日。
     お互いを深く知ることもできずに、いきなり遠恋は難しいよね。
     晴香ちゃんには、これから、この地元で、いい出会いもたくさん
     待っていると思う。
     俺としては、すごく残念ではあるけれど、晴香ちゃんのためを
     思ったら、昨日と今日を高校生活最後の思い出のひとつとして
     割り切って、これからを楽しんでほしい。
     俺が晴香ちゃんの足枷になってはいけないと思うし・・・ね。
     もしかしたら、俺の方が残念な思いを引きずっちゃうかも
     知れないけど」

    「はい。私も彩に背中を押されて、思い切って告白することが
     出来て良かったです。
     遠距離は・・・やっぱり辛いし、好きな人は側にいてほしいから。
     でも、・・・彩の言うとおり、もっと早く告白しとけば良かったな・・・」

    彩が言葉を引き継いだ。
    「でも、高校生活はもっと楽しめたかも知れないけど、晴香の
     性格を考えたら、それはそれで、この時季がすごく辛いものに
     なっていたんじゃない?
     良かったのかも知れないね。・・・これで」

    「それにしても、こっちは3年間同じ面子・・・同じ顔ぶれの野郎
     どもばかり。
     そっちは、2年の時から、やはり同じ顔ぶれの女子ばかり・・・。
     二人は、3年間一緒だったのかな?
     いずれにしても、隣同士で、壁1枚隔てただけとは言っても、
     やっぱりなかなか話す機会もないし、遠い存在だったよね」

    「それは、浩平さんがそういうことに関心を持たなかったから
     ですよ。
     結構、C組の男子たち、休み時間や放課後にうちのクラスに
     顔を出していたんですよ。
     ほとんどは晴香目当てでしたけどね。」

    「なあに言ってんだか?彩だって随分言い寄られていたじゃない。
     彩も頑なって言うか、適当にあしらってばかりいるもんだから、
     中には、ついでに他の子にちょっかいを出しているうちに、
     意気投合してできちゃったカップルもいたし」

    「ほう。うちの連中でかい? 誰よ、よれ」

    「ほら、伊東君とあきちゃんとか、友田君とじゅんとか・・。
     と言っても浩平さんのことだから、うちのクラスの子は、
     名前を言っても分からないでしょ!?」

    「まあ、たしかに。・・・そっか、あいつら、うまいことやってたんだ」
    妬ましくはないが、ちょっぴり羨ましい。

    「校内をいつも友達に囲まれて歩いている浩平さんの姿、
     晴香に引っ張られて私も陰からよく見ていたんですよ。
     全く気がつかなかったでしょ」

    浩平は驚き、一瞬ではあるが、3年間の折々の情景が頭の中に
    フラッシュバックしていた。
    そう言えば、階段を踏み外した時・・・。一緒に歩いていた連れが
    支えようとしたのも虚しく、踊り場に転がり落ちたその場に、
    この二人がいたなあ。
    確かに晴香の声だった。
    『あぶない!! そういえば佐藤さん、この間まで足を怪我して
     杖をついていたよね。まだ治ってないのかな?大丈夫かな!?』
    2年生の夏休み明け、実力試験の成績上位者が昇降口正面に
    貼り出された時。そうだ、あの時も俺の左後ろにこの二人が
    いたっけ。やはり晴香の声で・・・。
    『佐藤さん、やっぱりすごいね!』って聞こえていた。
    そうだ、そういえばあの時も・・・。

    「いつもクラスメイトに囲まれて楽しそうに話しながら、歩いて
     いましたよね。
     ただでさえ浩平さんは近寄りがたい雰囲気なのに、いつも
     多くの友達と一緒で・・・。晴香も私も声をかけるチャンスなんて
     なかったですからね。
     浩平さんは、B組に顔を出すようなこともなかったし。
     まったく興味を示さないんだから、恋する乙女と、それを何とか
     してあげたい親友にとっては、罪な男ではありますよね」

    「そう・・・なんだ。ずいぶんとカッコ悪いところも見られていたって
     いうことか・・・。
     そっか、B組に出入りしていた連中から、だいぶ俺のあること
     ないことも吹き込まれていたんだろうね。
     ようっし、仕返しだ。うちのクラスの奴らの事、聞きたい奴が
     いれば正体を暴いてやろうじゃないか。
     どれ、晴香ちゃん、誰からいこうか」

    浩平は、名前の挙がった級友たちのエピソードや彼から見た
    彼らの性格や素行を、面白おかしく話して聞かせた。
    晴香は、ケラケラと笑い、時折腹を抱えながら話にのって、
    次々に質問をしてきた。
    彩も、終始ニコニコして、時に頷きながら浩平の話に聞き入って
    いた。
    浩平は、勿論、仕返しだと言わんばかりに、級友たちの失敗談や
    エッチな側面を強調しながら話しているのだが、彩は楽しく聞き
    ながらも感心していた。
    この人は、表面的には友人の格好悪いところを聞かせている
    ようでいて、けして彼らをけなしているわけではない。
    むしろ巧みにその中に彼らの長所を織り交ぜ、
    『だから、こいつはいい奴なんだ』。『この野郎は憎めないんだ』。
    『愛すべき連中だよ』と、彼らのイメージを貶めないように、
    「素敵な人たちだな」と思わせるように仕向けている。
    それは、鼻の下をのばしてB組に顔を覗かせていた男たちの
    話し方とは、明らかに違っていた。付け焼き刃の配慮などで
    できることではない。そこに彼の人柄がにじみ出ている。
    これが、彼が人を魅き付ける、いつも多くの友人たちに囲まれて
    いた大きな理由のひとつでもあるのだろう。
    この彩の浩平への観察は、彩の長い親友である晴香をも見直す
    ことになった。
    『親友よ。君は、上辺だけで浩平さんを好きになったわけでは
     なかったんだね。男を見る目はしっかりと持っていたんだね』

    彩は、このとき、どうしようもなく浩平に強く魅かれる自分に戸惑っ
    ていた。やがてそれが、自分と浩平にとっての大きな幸福と、
    その後の浩平に、深い悲しみを背負わせることになろうとは
    思いもよらずに・・・。

    ひとしきり、晴香の興味を持っていたC組の男子について話し
    終えたところで、浩平は、もう頃合いかなという風に切り出した。
    「さて、晴香ちゃん、満足できたかな? C組は、面白い男どもが
    集まったいいクラスだろ。あいつらと同級で3年間過ごせて、
    俺もホントに楽しかった。
    俺のことはいろいろと聞いているようだし、密かに観察されても
    いたわけだから、まあ、それでいいよね。特に取り柄もないし。
    彩ちゃんもどうだったかな。楽しんでもらえた?」

    晴香は、本当に楽しく、いい時間が持てたと、喜んでいた。
    しかし、彩がなんだか元気がない。顔を伏せて考え込んでいる。
    晴香が心配そうに彩の顔を覗き込む。
    「彩? どこか具合が悪い? だいじょうぶ?」

    「えっ!? ううん・・・。いや、だいじょうぶよ。浩平さんの話に
     聞き入っていたら、なんだかいろいろ思い出して、ちょっと
     感傷的になっちゃった。
     アハハ、私らしくもない。
     浩平さん、おまけで付いて来た私ですが、すごく楽しかったです。
     ありがとうございます」

    彩は、浩平がこの店に入った時と同じ笑顔で応えた。
    彩は、『そうだ。お前はおまけなんだから・・・。晴香の引き立て
    役だぞ』と、自分に言い聞かせた。

    また会える機会があるといいねと、3人はそこで別れた。
    彩は独り、『いい思い出だけなんかで、終わらせたくない』という
    感情の迸りを制御できずに、それでも必死にこらえながら家路に
    ついた。

    ---------------------------------------------------

    5日後、朝9時半。浩平の自宅の電話が鳴った。
    「はい、佐藤です。 ああ、彩ちゃん? こないだはどうも。
     えっ、いやあ、さすがに起きてたよ。だいじょうぶ。
     どうしたの!? 晴香ちゃんに何かあった?
     えっ、映画を一緒にみたい!?
     いや、別に構わないけど・・・どうせ暇してるし・・・。
     友達? いやまあ、それぞれの都合で動いてるからねえ、
     なかなか連れだってどこかに行くということもできないし。
     それは、気にしなくてもいいよ。
     うん、今日? いいよ。だけど今、何が上映されているか
     分からないよねえ。
     あっ、新聞の折り込みで分かるの。うん。そっか、
     『シネ5』の近くで待ち合わせて、何を見るのかを決めようと。
     オッケー。いいよ。
     うん。・・・うん。じゃあ、お昼一緒に食べようか。
     えっ、空いてる方がいいから早めの11時半?
     分かった。じゃ、そこで」

    あの日の会話だけじゃ満足できなかったのかな・・・。
    それにしても、何で晴香ちゃん、自分で誘ってこないんだろ?
    親友とはいえ、彩ちゃんも晴香ちゃんのキューピット役をこう度々
    押し付けられたんじゃたまらんだろうに・・・。
    浩平は、何か腑に落ちないものを感じながら、二人から誘って
    貰えることは、やはり嬉しくもある。

    『シネ5』とは、市内の主要駅からアーケードを歩いて5分程の
    ところにある。正式には「△△シネマ ファイブ」という、大小5つの
    上映館を持つ映画館である。
    すぐ側の大きいけれど、大衆的な中華料理店で昼食を共に
    しながら、何を観るか決めようと言う事であった。

    さて、女の子とデートということになると、情けないが浩平には
    どういう服装で行けばいいものか迷った。
    自分が蔑まれるのは構わないが、自分のセンスのなさで二人が
    恥ずかしい思いするのは、申し訳ないと思う。
    以前に受けた従妹のアドバイスを思い出してみるが、組み合わせ
    が・・・分からない。考えて、考えて・・・。考えるのをやめた。
    気心の知れた仲間と一緒に外出する今までどおりのスタイルで
    いいやと。
    ジーンズに、黒のTシャツ、エンジ色のジャケットをはおった。
    スニーカー履きに、布地のバッグを肩から提げた。

    外はどんよりとして、いかにもひと雨来そうな空模様である。
    折り畳み傘をバッグに詰めて、自転車ではなく、バスで向かう
    ことにした。

    早めのバスに乗ったつもりであったが、思いの他道路が混雑して
    いて、降車のバス停に着いたのは、約束の5分前を切っていた。
    小走りで待ち合わせの中華料理店に向かっていくと、彩が入口の
    ところに立っていた。浅黄色のスカートに白のブラウス。グリーン
    のカーディガンをはおっていた。
    手を振っている。


    「やあ、ごめん、ごめん。待たせちゃったね。店に入っていて
     くれればよかったのに。
     あれ、晴香ちゃんは? 中にいるの?」

    「いいえ、今日は私一人で来ました」

    「ああ、そうなんだ・・・」

    「ご迷惑でしたか?」

    「いや、とんでもない。彩ちゃんとのツーショットも嬉しいよ。
     ・・・とにかく中に入るろうか」
    そう言えば、晴香と一緒に来るとは言っていなかったな・・・。

    店に入り、店員に促されるまま席に案内されて行くが、
    「こちらの席に」と指示された時に、彩が店員に向かって言った。
    「すみません、なるべく周囲が空いているところにしたいのですが、
     あちらの席に。いいですか?」
    浩平は、彩の何かしら決意を秘めたような態度に、自分に対して
    極めて個人的な相談でもしたいのだろうか。晴香との間に何か
    あったのかと、少し身構え、訝った。
    店員の了解で、二人は結構広い店内の奥の方に席を取り、
    丸テーブルに隣り合って腰を下ろした。

    「さて、何を食べようかな?
     俺、朝飯は喰わないんで、腹が空いちゃった。」

    「だめですよぉ! ちゃんと朝は食べなきゃ。
     だから浩平さん、ほっそりしてるんでしょ」

    「なんとも、朝は苦手でね・・・。食欲がわかないんだよね。
     って言うか、細いのは彩ちゃんも負けてないんじゃ・・・」

    「私のことは、いいんです!
     浩平さんは、朝の分もちゃんと食べて下さいね。
     何にしますか?」

    「ええっと、うん。チンジャオロースとチャーハンにしようかな」

    「じゃあ、私は、エビチリと卵スープと、普通にご飯にしよっと」

    「あっ、エビチリもいいな・・・」

    「アハハ、それじゃあ、私の分けてあげますから。ネ!?
     浩平さんは、好き嫌いはないんですか?」

    「うん。嫌いなものはないね。これまでに食べたことのある料理
     と食材には。ただ、あまりに脂っこい物は苦手かな。
     嫌いではないんだけど、食べているうちに気分が悪く・・・ね」

    料理をオーダーし、二人が同時に、置かれた水を一口飲んだ。
    これから、何か大事な会話が始まるのを予感するかのように。
    少しの沈黙の後、彩が意を決したように浩平の目をまっすぐに
    見て口を開いた。

    「浩平さん。私、浩平さんのことが好きです!」

    「へ!?・・・」
    浩平は、予期せぬ彩からのストレートな告白に驚いて、
    素っ頓狂な声を上げた。

    「私、あの5日前の浩平さんの話を聞いていて、浩平さんを
     見ていて、自分では抑えようのない何か・・・。経験したことの
     ない・・・胸を締め付けられるような感覚が湧きあがってきて。
     浩平さんを離したくないって・・・。もっと一緒にいたいって・・・。
     お別れした後にも、このまま終わるのは嫌だって・・・。
     でも、一時的な感情なのかなとも思いました。
     男の人を本気で好きになるのって初めてだったから、自分でも
     わけがわからなくて。
     家に帰り、日が経てば落ち着いてくるのかなって思い込むこと
     にしたんです。
     でも、逆でした。
     次の日も、そしてまたその次の日も、私の頭の中は、浩平さんの
     ことでいっぱいになっちゃうし。
     日が経つにつれて、『ああ、もう浩平さんはいなくなっちゃう』と
     思うと、いてもたってもいられなくなって・・・。
     私は、やっぱり浩平さんのこと、本気で好きになっちゃったん
     だって。
     会いたくて・・・・会いたくて。
     せめて、私の気持ちを聞いて欲しくて。
     それで今日、思いきって電話を・・・」

    浩平には、自分でも驚くべきことに、ふいに『俺も、好きだ!』と、
    叫び出したい感情が込み上げてきた。そして、一瞬にしてはっきり
    と自覚した。
    『ああ、俺も、彩ちゃんのことが好きになっていたんだな』と。

    しかし、お互いに付き合っていくには、、冷静にクリアしなければ
    いけない壁がいくつかある。まずは、それを話し合わなければ
    いけない。浩平は感情を極力抑えて、話し始めた。

    「ありがとう。素直に嬉しい。
     今、彩ちゃんの方から告白されて、俺も彩ちゃんのことが好き
     だったんだということに気がついた」

    彩の顔が輝いた。

    「でも、先にはっきりさせておかないといけない問題がいくつか
     あるよね。
     先ず、晴香ちゃんのこと・・・。
     俺たちが付き合い始めることで、彩ちゃんと晴香ちゃんとは
     気まずくならない?
     親友として今まで、何でも相談し合って来たんだよね。
     俺が言うのもなんだけど、特に彩ちゃんは、晴香ちゃんが
     『俺が好き』ということで、何とかしてあげようと後押ししてあげて
     来たわけでしょ?
     晴香ちゃんに、わだかまりは残らないかな?
     親友なだけに、なおさら。
     そりゃあ、俺は彩ちゃんが好きだ。いや、好きだったことに今、
     気がついた。
     女の子に先に告白させてしまって気がつくって情けないけど、
     これは、どうしようもない。
     けど、君たちの関係がこれで壊れてしまうことには耐えられない。
     それだけは、何としても避けたい」

    彩は、意外にも深刻そうな表情も見せずに、卒業式の日から
    今日までのことを話し始めた。

    「晴香のことは、だいじょうぶです。
     晴香は、3年間は本当に一途に浩平さんを追っていました。
     でも、結局卒業式を迎えたあの日までは、言い出すことが
     できなくて・・・。
     浩平さんが東京の大学に合格して、どうやらそちらに行くようだ。
     地元にはもう、帰って来ないかも知れないと分かった時点で、
     晴香は、『これで失恋かあ・・・。でも、一度だけでも話がした
     かったな。思いを伝えておけば良かったな』って。未練な様子が
     ありありだったので、私が、『告白だけでもしちゃえば?
     ありきたりだけど、思い出に、制服の第二ボタンでも貰えるよう
     に頼んでみれば?それでスッパリとあきらめて、新しい職場で
     いい人をさがしなよ』と、あおったんです。
     そしたら思いもかけず、浩平さんの方から話す機会をつくって
     くれて。
     晴香は、その日、浩平さんと別れた後、
     『良かった。やっぱりいい人だった。思った通りの人だった。
      ほんの一刻でも、私に目を向けてくれて、本当に嬉しかった。
      これで、高校生活3年間に思い残すことはないや。
      彩、背中を押してくれてありがとう。今度は、私が彩を応援する
      番だね。早く、いい人見付けなよ』って。
     私は、思わずそのときにポロっと言っちゃったんです。
     『私、浩平さんを好きになっちゃったかも知れない』って。
     晴香は、ホントにビックリした顔をして、暫く固まっていました。
     でも、すぐにいつもの晴香の穏やかな顔に戻って、言って
     くれたんです。
     『そうかあ・・・。でも、それも分かるな・・・。だって、3年間・・・
      そう3年間も彩は私に付き合って浩平さんのことを見て来たん
      だもんね。
      私は、好きだと言う感情を隠しもしないで、・・・自分本位の目で
      浩平さんを見ていたけど、彩は、私の隣で、冷静に観察して
      きているんだよね。
      いろいろな人の浩平さんの噂も一緒に聞いて、実際に私と一緒
      に、自分の目で確かめて・・・。
      私は、能天気に浩平さんへの熱い思いを彩にぶつけて、時に
      慰めて貰って、時に怒られて、そして彩に甘えて親身に相談に
      乗ってもらっていただけだけど。そうだよね・・・。
      彩は、私に気を遣うあまり、無意識に自分の浩平さんへの感情
      を抑えて来たんだろうな・・・。そして今日、会って話してみたら
      ・・・か。
      思っていた通りの、素敵な人だったもんね。
      いいじゃん! さすがは親友! 同じ男に惚れたか。
      私は恋人にはいつも側にいて欲しいから、それが叶わない
      恋ならと割り切ったけど、遠恋でも二人の思いが強ければ
      やりようもあるかもね。
      浩平さんは、彩に好意を持ってはいるよ。それは、私が保証
      する。後は、彩次第だよ。もっとガッチリと浩平さんのハートを
      つかめれば・・・。
      会えない期間、彩が彼の心の中に、強い影響を持った存在と
      して、どう居続けていられるか・・・かな?
      よし、頑張れ!今度は私が彩を応援する。
      ただ、時間がない。思いを伝えるんなら、早くしなきゃ』って
     言ってくれて。
     でも私、そのときは、自分の気持ちにまだ半信半疑だったんです。
     本当に浩平さんのことが好きなのか・・・。
     ううん、好きなことには違いないんだけど、本当に恋と呼べるよう
     なものなのか。
     なんて言ったらいいんだろう・・・。うまく表現できないんだけど
     ・・・。何か、自分が自分でなくなりそうでこわい。
     それが、その時の私の正直な気持ちでした。そしたら、晴香が、
     『だから、それが恋なんだって!私の辛さが、本当の意味で理解
      できたでしょ。彩は、本気の恋の経験がなかったから、そうだ、
      未知との遭遇ってやつだわね。
      帰って、落ち着いてからよく自分の心に聞いてみなよ。
      はっきりするまでは苦しいぞぉ。
      はっきりしたらしたで、また別の辛さがやってくるけどね。
      実際に付き合うようになったら・・・、そりゃ私も経験がないから
      知らん。でも、その前まではアドバイスできるよ。
      これまで彩が私に言ってくれた言葉、それに対して私がどう
      感じたかっていう経験があるから』って。
     それで、昨日まで・・・、晴香の言ったとおり、本当に辛かった。
     でも、うじうじしている時間がない。それで、今日しかないと
     思って、浩平さんに電話する前に、晴香に電話したんです。
     『今日、告白するからついて来て』って。
     そしたら晴香、なんて言ったと思います?
     『付き合いたいって告白する女に、私が付いていけるかい!
      私の場合は、片想いに決着を付けるためだけ。ある意味、
      失恋前提で会いに行ったんだから、彩が必要だったんだよ。
      今日私が付いて行ったら、それこそ[人の恋路を邪魔する奴は]
      になっちゃう。
      だいたい、浩平さんが私に遠慮して本心を明かせなくなっちゃう
      でしょうよ。
      彩なら、だいじょうぶ。期待して報告を待ってるよ〜ん』って。
     ひどいでしょ?」

    「ふーん。晴香ちゃんの積年の思いが、彩ちゃんに移っちゃったと
     いうところか・・・」

    「そんなことはないでしょうけれど・・・。
     だから、晴香のことは大丈夫です。
     私の告白、浩平さんに受け止めて頂いたと捉えて構わない
     ですか?
     その・・・彼女に・・・してもらえますか?」

    「勿論。本来は、俺から先に告白しなきゃいけないことだったん
     だよ、きっと。俺、鈍いから・・・。うん、そうなんだよ・・・」
    浩平は、少し下を向き考えた後、大きく深呼吸してから彩に
    向き直り、真っ直ぐに彩の目を見て言った。
    「俺は、佐藤浩平は、北島彩が大好きです。
     彼女になって下さい!!」

    彩は、満面の笑みで応えた。目がキラキラしていた。
    「はい。喜んで!」
    照れながら見つめ合っている二人。
    浩平は、男女や年齢を問わず、人の笑顔を見ることが好きだった。
    自分も幸せな気分になってくる。
    お互いの告白タイムが終わったところで、料理が運ばれて来た。
    彩が、かいがいしく浩平の小皿に料理を取り分けてくれている。

    「あっ、いいよ。エビチリは、彩ちゃんが食べた残りをもらうから」

    「何を言ってるんですか?
     こうやって彼と料理を分け合って食べるのも、私の小さな夢の
     ひとつだったんですから。
     その代り、チンジャオロースも少し分けて下さいね」

    「彼か・・・。彼女か・・・。夢か・・・。
     じゃあ、俺のささやかな夢も実現させてもらおうかな?」

    「なんですか? あらたまって」

    「俺ね、バカみたいなことだけど、彼女ができたら、『ちゃん』とか
     『さん』付けじゃなくて、呼び捨てにしたかったんだ。
     何かね、『俺の彼女だぞ』っていう感じでさ。
     まあ、同校で同学年だから、親しい間柄では呼び捨ては当たり
     前ではあるんだけどね。ハハ、バカでしょ!?」

    彩は、笑いながら応えた。
    「いいですよ。私もその方が嬉しい。
     じゃあ、私は、なんて呼ぼうかな?
     『浩ちゃん』でいいですか!?」

    「いいよ。じゃあ、彩、もうひとつ。
     同い歳なんだし、タメ口にしょうよ。その方が親しみがわくし」

    「うーん・・・。でもね、さっき彼女にしてもらいましたけど、私にとって
     浩ちゃんは、彼氏であると同時に、尊敬の対象でもあるんですよ。
     これは晴香にとっても一緒ですけど。
     だから、なかなか、すぐには難しいかも。
     徐々に・・・でいいですよね。
     あっ、このおエビチリ、おいしい。浩ちゃんも食べてみて」

    さすがに「あ〜ん」はしない。が、何とも赤面しそうな会話である。

    「それにしても不思議だよなあ・・・。
     彩にしても晴香ちゃんにしても、3年間で二人で作り上げた俺の
     偶像が独り歩きしちゃったんだろうけど、何でこんなに魅力的な
     二人が・・・。
     実際に校内では相当人気があったようだし、引く手あまただった
     だろうに。
     それが二人とも、あぶれ者の俺に・・・」

    「晴香は、私でさえ感心するほど、浩ちゃんに一途でしたからね。
     私は、晴香に振り回されて、他に目を向ける機会を失っちゃた
     かな。そして、知らないうちに浩ちゃんの存在が私の中で大きく
     なっていた。
     違うな・・・。他に目を向ける機会を失ったと言うより、他に目が
     行かないほど、浩ちゃんが好きになっていたのに、自分で気が
     つかなかった・・・ですね。
     もしかしたら、立場が違っただけ、感情の表現の方法が違った
     だけで晴香と私、二人でそれぞれに浩ちゃんに片想いをして
     いたのかも知れない・・・。
     あまりにも一途な晴香の姿を見ていたから、そこに割りこんで、
     私も好きだからとは言えるわけもないし、考えることを放棄して
     いたというか・・・。
     先に『佐藤さんが好きだ』と私に打ち明けた晴香を、3年間私が
     見守る役に徹して、晴香が失恋を受け入れた後で、にぶい私が
     やっと自分も同じ人が好きだったと気がついて。思わず漏らした
     から、晴香も応援してやろうという気になってくれたのかも知れ
     ませんね。
     そして結果的に、こうやって私が浩ちゃんの彼女にいすわっ
     ちゃった。・・・晴香に感謝しなきゃ」

    浩平の方は見ずに、料理を口にしながら遠くを見るような目で笑み
    を浮かべながら回想する彩の瞼には、うっすらと涙が滲んでいた。
    浩平は、『このふたりの友情は、二人にとってなにものにも代え
    がたいもので、お互いがこれまでも、そして、これからも大きな
    存在としてあり続けるんだろうな』と、うらやましく感じた。

    「そうだ。浩ちゃんに関しての一番確かな情報源は、
     実は、真知子先生だったんですよ」

    「はい!? 真知子先生って、B組担任の?」

    「そうですよ。放課後に真知子先生の時間が空いた時、期待して
     教室で待っている何人かに、興味のある男子のことについて、
     質問した子の要望に応じてよく話してくれたんです。
     勿論、男子の話はおまけで、いろいろな相談に乗ってもらって
     いたんですけどね」

    「へえ、あの真知子先生がねえ・・・。
     俺達のクラスでも国語の担当だったから、そりゃいろいろと
     教室での様子は知られてはいるわけだけど・・・。
     でも、先生と生徒の立場だから、悪い話はしないんじゃない?
     確かに事実ではあっても、いい方の側面ばかりが、話題の男子
     の情報としては伝わり易いよね」

    「そうでもないですよ。結構、厳しい評価をされる男子もいたし」

    「それで、その噂に上る男子生徒の中に俺も入っていたと」

    「うん。浩ちゃんも入っていたというより、真知子先生は、浩ちゃん
     のことだけは、・・・・ああっ、もう、この『浩ちゃん』って呼び方、
     ずっと付き合っていたみたいで、すごくいいナ。・・・ねぇ!?」

    「そんなことは、どうでも宜しい!
     で、真知子先生は俺のことだけはどうしたって?」

    「エヘヘ。
     真知子先生、浩ちゃんの話になると、明らかに他の男子たちより
     熱が入るっていうか、その場にいる子たちが聞いてもいないこと
     にまで話がいくの。ある時、
     『彼のことを理解した上で、あなたたちの誰かが彼を射止める
      ことができたら、先生は、喜んで応援するし、祝福するよ』って。
     『ただし、ちょっぴり嫉妬するかも知れないな』とも言ってましたね。
     先生、私のこと祝福してくれるかな? 嫉妬されちゃうかな?」

    「なんじゃ、そりゃ。先生が嫉妬って・・・。
     先生と生徒で、しかも若いとはいえ既婚者だし・・・」

    「そうじゃなくて、真知子先生も浩ちゃんのいちファンだったと
     思うんですよ。
     浩ちゃん、よく国語の授業で自分で書いた作文を発表させ
     られたでしょ」

    「まあね。でもね、俺は嫌だったんだよ。
     書くことは構わないんだ。文章を書くのは、嫌いじゃないから。
     でも、みんなの前で読むのはねえ・・・。
     もともとあがり症でね。途中からは自分で書いた文章なのに、
     自分で何を言ってるのか分からなくなってきちゃう」

    「真知子先生ね、すごく浩ちゃんの作文を評価していたんですよ」
    彩の担任であり、浩平のクラの国語の担当だった教師・真知子の
    浩平への評価は次のようなものだったと、彩は楽しげに話した。

    浩平君の与えられたテーマに沿って、対象を冷静に見つめ、
    客観的に評価し、論理的に物事の本質に迫ろうとする眼は、
    今までの教え子の中でもズバ抜けている。
    彼の凄いところは、そういう、科学的な論理思考だけではなくて、
    本質を見極めた後に、実に人間的な感情の細やかさ・・・優しさを
    持ってその対象を見つめ直し、価値の再評価をして結論を導き
    出すところにある。
    しかも、あなたたちがそうであるように、C組でも、鉛筆を走らせて
    いる時間よりも頭を抱えて考えている時間の方が圧倒的に長い
    生徒がほとんどなんだけれど、彼の場合は、テーマを見てから
    それほど間を置かずに鉛筆が動き始めるんだな。
    彼は、思考し始めると、書こうとする道筋が頭の中にすぐにイメージ
    されていくんじゃないかな。そして、書き進めながらそのイメージを
    形のあるものにし、その先、その先の道を作って、結論にまで到達
    してしまう。
    だから、他のみんながまだ三分の一も書けずに悩んでいるうちに、
    全てを書き終えて、手直しに入っている。
    それも、よく見ていると、文章校正をしているんじゃなくて、誤字
    脱字を直しているだけなんだよね。
    それで、だいたい10分以上は時間を余らせて提出してきちゃう。
    彼が席に戻ってから、何かおかしなところはないか読んでみるけど、
    そりゃあねえ、もっとここは、こういう表現にした方がというような
    ところはあるけど、私が生徒に期待している水準のはるかに上を
    行っちゃってる。
    後で読み返してみても、感動すら覚える。

    「もうね、褒める褒める」

    「ほう、それはまた、えらく買い被ってくれたもんだね」

    「そうかなあ・・・?
     でもね、そんなことを先生が言ったところで、私のようにすごく
     可愛いらしいけど、極めて普通の感覚しか持ち合わせていない
     女の子には、先生が浩ちゃんの何を私達に教えようとしている
     のかが、なかなか理解できないわけですよ。
     浩ちゃんの作文は素晴らしいと、私達に褒めて聞かせてもしかた
     がないわけだし」

    「誰が、『すごく可愛いらしい女の子』だって?」

    「わ・た・し! ねえ、・・・なんで怒ってるの?」

    浩平の目が、深く思索する時の鋭いものに変わってきていた。
    彩にとっては、初めて間近に見る表情であり、不機嫌そうに
    映った。

    「何も、怒っちゃいないよ。だいじょうぶ。
     うーん・・・。真知子先生が過大ではあっても、俺を評価して
     くれるのはありがたい。
     でも他のクラスで、先生が教え子の個人的なことを言い振らす
     のは、あまり愉快なことではないね」

    「そこが、浩ちゃんなんだろうなあ・・・。
     他の男の子なら嬉しくて、単純に喜んじゃうところだと思うけど。
     じゃあ、この話、やめます?」

    「いや、そこまで聞いといて、その先を聞かないわけにはいかない
     なあ・・・」

    「でしょ!? じゃ、つづき」
    真知子先生の浩平評を更に続けた。

    先生の言いたいこと、分かる?
    浩平君はね、しっかりとした信念を持っていて、それを忠実に
    守ろうとしているところがあるね。ちょっと真面目すぎるけど。
    それで、初めて会った女の子を見るにしても、他の男の子が、
    どうしても見た目や上辺で判断してしまうところ・・・これは、
    高校生くらいじゃ仕方がないんだけど、彼は、その時の姿勢や
    態度、話し方や話す内容などで、おそらく極めて的確にその相手の
    本質を見抜いて、その後の接し方を決めて行くだろうということ
    なのよ。自分の信念にそってね。
    だからこそ、彼が『この子なら!』と感じて、交際ができる女の子
    なら、たぶん、間違いなく立派な子だろうと、先生は密かに期待
    しているわけ。その立派な子がB組であってくれれば、喜ばしい
    ことだけどねえ。

    「だって。えへへ。
     浩ちゃん。私、何があっても浩ちゃんを支えるからね。
     浩ちゃんの負担にならないように、頑張るから。
     だから、捨てたりしないでね」

    「おいおい、何でそういう方向に話が飛躍するんだ?
     彩が俺を支えるとか、負担にならないようにするとか、
     捨てないでって・・・。どこから・・・」

    「だって・・・。ここまでの真知子先生の話でさえ、晴香や私に
     プレッシャーを与えるのに十分だったのに、先生はその後に、
     こう続けたの」

    浩平君にはひとつだけ、おそらく彼のコンプレックスになっている
    ことがあるのよ。それがなければ、もっとはじけて、もっと積極的に
    なっているはずなんだけど・・・。
    彼、あまり体が強くないんだな。
    別に病気を持っていたり、特に生活や勉強や社会に出て仕事に
    支障が出るようなものではないんだけれど、体力がねえ・・・、
    頑健とは言い難い。
    あなたたちも、彼の顔色やスマート過ぎる体型を見て、うすうすは
    感じていることだと思うから話しちゃうけど、うちの先生たち、
    ・・・他の教科の先生も含めてね。彼だけは、宿題をやって来な
    かったり、家庭学習でリポートを提出したりをさぼっても、大目に
    みているんだな。勿論、彼にはそういうことは言ってないよ。
    でも、彼もそういう先生たちの遠慮というか、配慮は感じている
    はず。
    事実彼は、家ではほとんど勉強している素振りがない。
    あなたたちが、宿題やリポートを自分でやっているか、友達の
    やったものを写したものか。あるいは、忘れたと言って提出して
    来なかった子が、本当に忘れたのか。やる気はあったけど出来な
    かったか、初めからやる気がないかなんて言うのは、先生たちには
    お見通しでね。
    彼は、「やりたくない」んじゃなくて、「やらない」んだな。
    彼の場合、遅くまで家で勉強していたら、疲れがたまって、授業に
    支障が出ることが自分で分かっているから。
    それでも、実力試験なんかでは、あの成績。常に一桁台の順位に
    いるよね。それは、家で勉強しない分、授業に集中できているから。
    だから、彼に惚れちゃったら、唯一とも言っていい弱点。彼のそう
    いう面、体力面をカバーして、支えられるかどうかをよく自分に言い
    聞かせて交際を始めないとね。
    彼は、そういう体力の面がコンプレックスになっていることは間違い
    ないと思うけれど、そのことがあるから、他人の辛い面、痛みもよく
    理解できる。
    だから、他の人に対してはすごく寛容だし、優しいんだな。
    だけど別に、彼と交際する上で、甘えちゃいけないとは言わないよ。
    たぶん彼は、自分を愛した人の望むことには、自分のことはそっち
    のけでも相手に応えてあげようとするし、それを自分の幸福と感じる
    タイプだろうから。
    でも、いつでも彼に甘え通しでは彼の体が続かないよね。
    だから、彼とともに生きようと思うのなら、彼には体力面の負担は
    あまりかけないこと。その分、精神面ではいくら甘えても彼は、
    それに応えてくれるわよ。
    だから、彼女にして欲しいんなら、彼の体に気を遣って、彼の支え
    になってやれるかどうか。そういうパートナーになれると、自分で
    思いきれたなら、大いに、彼にアプローチして欲しいな。
    先生は、彼には早く、そういうパートナーを見つけて欲しいと思って
    いるんだ。本当に、彼が本来の力を発揮できるように・・・ね。

    「だから、私は浩ちゃんを支えていけなかったら、真知子先生に
     怒られちゃう!」

    「ふーん・・・。まあ、受験期を除いて、家では勉強していなかった
     とか、体が弱いとかは、その通りだけどね・・・。
     でも、真知子先生もいくつか、間違えた認識をしているよね」

    「どういうところ?」

    「たとえば、夜、宿題や予習・復習をしようと思えばできなかたわけ
     じゃない。
     実際に、次の日が休みの時なんかは、徹夜で麻雀をやったり、
     平日でも、結構遅くまで連れと街中を徘徊していたものだし。
     世間では『不良』のレッテルを貼られている他校の連中ともよく
     飲みに行ったり、ロックバンドのコンサートを観に行ったりもしたよ。
     どんなに悪い噂がつきまとうような奴でも、付き合ってみなけりゃ
     分からないところがある。
     そういう奴らの中にも、実際には友達思いのすごくいい奴もいる。
     何よりも幼い時からの付き合いは大事にしたい。
     だから、朝方まで飲むこともあったし、とことん付き合ったよ。
     奴らに感化されて、煙草も吸っているし。
     校内では真面目な一生徒で通したけれど、それは、目をつけ
     られたら行動が縛られるからで、けして先生たちが言うような
     品行方正な人間じゃないよ。
     ま、彩には俺のそういう面も認識しておいてもらわなければ
     いけないから、ちょうどいい機会ではあるけれど。
     それに、俺が、いくら他人より体力がないとは言っても、人間が
     人生の中で最も気力・体力が充実しているのは、今の時期から
     30歳代半ば頃までだろうから、多少の無理はきく。
     俺も、今から今後十年間程が最も体力の充実期にあると思う。
     もともと虚弱だからこそ、それがより実感できている。
     一晩徹夜をするくらいはなんてことはないし、実際に睡眠時間を
     削ってでも遊んでいたしね。
     そういう意味では、俺は先生たちの配慮を逆手にとって、利用
     していたことになるよね。それに・・・」

    「それに?」

    「人の内面について、自分でもなかなか自分の本来の姿を客観的
     に観察して、言葉で表現するのは難しいことだけれど、分かり易い
     ところで言えば、俺が実は彩が好きだったっていう感情。これは、
     理屈じゃないんだよね。
     論理的思考だの、科学的洞察だのなんて、何の役にも立たない。
     だって、彩と向き合って話したのは、今日でたったの3回目。
     時間にして数時間でしかないわけだよね」

    「・・・うん」

    「たったそれだけの時間と回数で、ましてやこれまで、恋愛経験も
     ない俺が、北島彩という女の子がどういう子であるかなんて、
     その本当の姿なんて分かるはずがない。
     彩たちは、俺のことをいろいろと見たり聞いたりはして来たわけ
     だけれど、俺は、彩については全く知る機会を持てなかったわけ
     だし。
     確かに、彩のことは好きだよ。大好きだ。
     でも、はっきりと理由を聞かれたら・・・、まだ分からないもんな。
     情けないないことに、彩の方から告白されて、一瞬にして俺の
     方こそ初めて会って話した時から彩が好きになったんだって
     気がついた。
     そう、普通に人間としての好き嫌いじゃなくて、恋愛の対象として
     好きなんだって。
     この『好き』っていう感情。理屈じゃないんだよ。明確な理由
     なんかない。けして冷静に彩のことを観察して『この子なら』
     なんて思ったわけじゃない。
     だって今、目の前にいて俺のことを好きでいてくれる彩のことを、
     その顔、その姿、その言葉・・・。今見えている聞こえている彩
     以外、何も知らないんだもの。
     要は、きっかけとタイミング。それと相性・・・・なのかな?。
     世間で言うところの『縁』なのか。でも、そういうものともちょっと
     違う・・・。
     『好きだ』っていう、心の底から湧き上がってくる、胸をつかまれる
     ような感情は、それだけとも違う。もっと本源的な何か・・・。
     一生、言葉で理解することはできない感情かも知れない」

    「そうですよ・・・ね。
     浩ちゃんには、私のこと、まだ何も知ってもらってないですね。
     『好き』な理由か・・・。
     私は、浩ちゃんのどこが好きかって聞かれたら、いっぱい言える
     けど、でもそれは、今だから。
     昨日まで、浩ちゃんが好きで好きでどうにかなっちゃいそう
     だった時は、浩ちゃんの言うとおり私も理屈なんかいらなかった。
     『だって、好きなんだもん』って」

    「そうなんだよなあ・・・。
     でも彩。君を好きだと言うことだけは、間違いない。嘘じゃないよ」

    「うん、うん・・・。ありがと。」
     彩の目から頬に一筋、涙が伝わり落ちた。

    「なんで? 泣くなよぉ。俺、何か悪いこと言った?
     さっき話したような、不良っぽい人間を好きになって後悔した?」

    「あっ、ごめんなさい。違います。
     そういう、私の知らない面も含めて、私が好きになった浩ちゃん
     だから、もっとたくさん知っていきたい。
     ・・・でも、あと2週間余りで、会えなくなっちゃう・・・。
     覚悟はしていたつもりだけど、私は、どうすればいいの?
     夏休みになるまで、ただ待っているしかないの?
     どうやって、この短い間に、私のことをもっともっと知って
     貰えるの?
     浩ちゃんが戻ってくるのを信じてただ、待つしかないなんて・・・。
     分かってはいたつもりだけど、やっぱり・・・。
     ごめんなさい。これじゃ、浩ちゃんを支えるなんて口ばっかり
     ですよね。負担になっちゃいますよね。
     でも・・・、お願いだから、きらわないで!」

    静かな声音だが、涙は大粒のものに変わっていた。

    これまでも、そしてこの後も、ずいぶんと『ごめんね』が多い二人の
    会話。それは、もちろん二人の人柄をあらわすものではあるが、
    二人にとって過酷な運命が投影した、誰にもフォローのしようの
    ない、彩からの『ごめんね』がやってくるのは、4年後のことだった。

    「いや、俺も分かっているんだよ。それなんだよな、問題は・・・。
     晴香ちゃんが俺を見限った理由もそこなんだから。
     よし、あとで二人でよく考えよう。な!? 泣くなって・・・。
     映画! 観たかったんだろ? 何にする?」

    「あっ、そうだったネ!」
    彩は、ハンカチで目を拭い、鼻を押さえながら、バッグから
    『シネ5』の折り込みチラシを出した。
    「ねえ、浩ちゃんは何が観たい?」

    春休みのことでもあり、子供向けのアニメやら、ラブロマンスもの
    やら、アデベンチャーやら、様々なジャンルの映画がロードショウ
    公開されていた。

    「うーん・・・。俺はその『戦国武将もの』がいいんだけど、女の子が
     観たい映画じゃないよねえ?」

    「やったー! 実は私、時代劇が好きなんですよ。
     浩ちゃんの次に!!」

    「彩、初めの印象と変わったね!?」

    「えっ?そう? 私は何も変わってませんよ。
     浩ちゃんを好きになっちゃったことと、
     浩ちゃんの彼女にしてもらったこと以外は」
    勿論、彩の心の振幅は、彩自身が一番自覚していた。
    そしてそれは、願いがかなって交際が始まったのに、その相手が
    すぐに離れて行ってしまうという、二人の関係の不安定さに由来
    することも。

    「だから・・・そういうところが・・・。ま、いいや。
     どれ、2回目が1時からか・・・。
     ちょっと早いけど、映画館に入って開演を待とうか」

    彩がトイレに寄っている間に、浩平は会計を済ませて出口に立って
    いた。
    外はいつしか、ドシャ降りの雨。
    浩平は、空を見上げながら、バッグから傘を取り出して彩を待った。

    「お待たせえ。わあっ、すごい雨!」

    「近場でお昼にして正解だったね。傘は、持ってる?」

    「はい。持っては来てますけど・・・。浩ちゃんの傘に一緒に
     入っちゃダメ?」

    「これ、小さいから濡れちゃうよ」

    「すぐそこまでだから、だいじょうぶ。入っちゃおっと!」

    浩平は左手に持った傘を自分の顔の右脇に回し、右手で彩の
    右脇を抱えるようにして、彩の体が濡れないように気遣いながら
    歩いた。
    浩平がチケットを買っている間、彩は浩平の左側に回って、用意
    して来たタオルで丁寧に浩平のジャケットやジーンズを拭いて
    いた。

    「浩ちゃん、ごめん。結構、濡れちゃったね。
     ジャケット脱いで? カゼひいちゃう」

    「だいじょうぶだよ。映画を観ている間に乾くから」

    「だめえ! カゼひいちゃったら、私のせいになっちゃう」

    二人は、急ぎ足でロビーに入り、温かい飲み物を買い、前回の
    鑑賞者が出てくるのを待って館内に入っていった。
    後ろの方の、周りが空いている席に並んで腰かけ、手を握り
    合っていたが、上映が開始されると、彩は、浩平の肩にそっと
    頭をもたれて来た。
    彩は、なんとも言えない幸福感に包まれながら、映画を観ていた。

    「おもしろかったね? やっぱりあの迫力は、テレビじゃ味わえ
     ないよね」
    ロビーから外に出ると、雨は上がり、雲間から日が射し込んでいた。
    彩と浩平は、これからどこに行こうかと、どちらかから言いだした
    わけでもなく、ごく自然に、歩いて10分ほどのところにある緑地
    公園に向かっていた。
    彩が、手を繋いできた。
    春先に雨あがりの午後4時前、少し肌寒くはあったが、空気が
    澄んで清々しかった。

    雨上がりの平日、人影もまばらな公園を手をつなぎながら歩く
    二人は、お互いの家族のことを紹介しあっていた。
    浩平の家は、主要駅から徒歩だと30分ほど西側の住宅地に
    あった。最近になって都市整備が進み、道路が拡張され、子供の
    ころに遊んだ田畑や小川はつぶされ、市の施設、マンションや
    ショピングセンターが次々と建てられていた。
    浩平は、便利さは歓迎するものの、幼いころの懐かしい情景が
    破壊されていくようで、寂しさを感じてもいた。
    同居している家族は、公共団体職員の父とパート勤めをする
    母だけ。6歳上の兄は、勤務の関係で社宅寮に住んでいて、
    浩平の家にはいない。
    彩の家は、駅からだと歩いて行ける距離ではない。
    方角的には、駅から見て浩平の家より更に南西側に位置し、
    浩平の家からでも歩けば40分以上はかかるだろう。
    彩の父は、地元ではそこそこの規模の電子部品工場を持つ
    会社を経営していた。母は、夫の経営する会社の経理を担って
    いた。母は家事があるので、5時半頃には帰宅してくるが、父は
    いろいろな付き合いもあって、毎晩遅く、午前様も珍しくはない。
    『体が心配だ』と、彩は言った。
    2歳上の姉は、他県の女子大生で、家を離れて独り暮らしをして
    いる。
    浩平は、『やはり、彩は、お嬢様だったな』などと考えていた。

    「彩、あと残り半月。俺はなるべく彩と一緒の時間をつくりたい
     けど、彩はどうする?」

    「私も・・・。あのね。そう言えば明日、朝9時半に、お父さんに
     おねだりして買って貰った車が来るの。軽だけどね、一応、
     新車よ。ドライブしよ!」

    「そうかあ、いいなあ・・・。俺は後は筆記試験さえ合格すれば
     免許は取れるけど、進学に金がかかるから、とても車には回ら
     ないもんな。
     しかし、彩の運転で・・・だいじょうぶかあ・・・」

    「これでも、運動神経はいいんだよ。教習所の先生にも褒められ
     たんだから」

    「それにしても、初めて乗る車だしなあ・・・。
     ま、運転は慣れだから、乗っていれば何とかなるか。
     ・・・さて、問題は、俺が向こうに行ってその後だよな・・・」

    「うん・・・」

    「電話は、むこうに着いてすぐに申込みを済ませても1週間は
     かかるかな。
     とりあえずは・・・、手紙を交換しようか。
     電話が通っても、そうしょっちゅうかけてたら、お互いにお金が
     かかってしょうがないし。なるべく早く、バイトは探すけどね」

    「手紙か・・・。1回やりとりするのに、1週間くらいはかかっちゃう
     でしょ?・・・声も聞きたいし、顔も見たくなっちゃうだろうな・・・。
     月に1回でもいいから、浩ちゃんのところに行ければいいんだ
     けれど、毎月のことだと、お母さんに不審がられちゃいそうだし。
     浩ちゃんだったら、素敵な女の人、いっぱい寄ってくるんだ
     ろうな・・・」
    彩は、鼻をすすった。

    「また、泣く・・・」

    「だって・・・」

    「俺が信じられない!?
     そんな男だと思って、俺と付き合いたいと思ったのかい!?」

    「ううん、信じてる。信じてはいるけど、遠くにいる彼女より、やっぱり
     近くにいるきれいな人が寄ってくれば・・・。
     浩ちゃんは、二股をかけるような人じゃないのは分かっている
     けど、私なんかより素敵な女の人はたくさんいるわけで、お互いに
     魅かれあったら、たった1通の手紙で、交際したい人ができたから
     別れようって送られて来ても、私には、こっちでデートしたことが
     ある相手だという事実しか今はないし、それを拒否する理由も
     手段もないんだもん・・・」

    「俺は、大学で知り合った友人たちは大事にしたいと思っている。
     何かしらサークルにも入るつもりでいるし、バイトもする。
     もちろん、そういった中で知り合い、親しく接する女性もいる
     だろう。
     だけど、彩。俺が彼女として付き合えるのは、お前だけだ!
     彩の顔が見られない、声が聞けなくて淋しくなるのは、俺も
     一緒なんだよ。だからと言って、淋しいからと言って、他の女に
     手を出すようなことは、絶対にない。
     そうだな・・・1週間に1回程度、電話をかけておいで。
     その時、もし俺の部屋に女の気配があれば、彩ならきっと
     気付くだろ?
     俺も、週一くらいは、彩の家に電話をするから。な!?」

    「・・・うん。・・・信じてるからね。絶対だよ!」

    「よし。夏休みには、また戻ってくるから」

    陽が西の空に陰り、辺りは薄暗くなり始めていた。
    どちらからともなく、密集した雑木林の前まで来ていた。
    彩は、浩平の両脇に自分の腕を差し込み、少し上を向いて目を
    つぶった。
    いくら鈍い浩平でも、その仕草が何を意味しているのかは理解
    できる。浩平は、唇を近づけ、・・・おでこにキスをした。
    意地悪をして、そのまま放置してみる。
    彩は、ゆっくりと目を開け、せつなそうに抗議をする。
    「なんで? それだけ?」

    浩平は、返事はせずに、また顔を近づけた。今度は彩の唇
    目指して。
    初めは軽く触れ、2度、3度、彩の唇を吸ってから、舌を割って
    入れた。
    彩は何の抵抗もなく受け入れ、自分の舌を絡ませた。
    苦しくなっては離し、またつける。次第に濃厚なものにかわって
    いく。時に、貪るように互いに唾液を吸い、飲み込んだ。
    『クチュッ』という音とともに唇が離れ、舌と舌から糸を引いた。

    彩は、トロンとした眼で見上げている。小さく呟いた。
    「アッフウ。すごい・・・。体が溶けそう・・・」
    口にこそ出せないが、彩は、キスの最中、自分の下半身が
    熱を帯び、ジワっと何かが染み出してくるのを感じていた。
    浩平にしがみつき、くぐもった声で呟いた。「愛してる!」
    浩平は、彩の頭を撫で、ポン、ポンと軽く叩いた。

    「彩、もう帰らなきゃ」

    「うん・・・。そうね」

    一旦、駅に戻り、彩が翌日に、浩平の家まで車で行くことを
    約束し、彩はバスに乗った。浩平は、余韻を楽しみながら、
    歩いて帰ることにした。
    キスを経験しただけなのに、彩の顔には大人の色気が
    加わったように見えた。

    出典:オリジナル
    リンク:なし

     

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