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    【他人棒に】大事なものは大事にしろ 1【寝取られ】


    不安と緊張と興奮のないまぜになった表情を浮かべる貴島友一は、傍らに寄り添う妻の顔を見た。
     
     智香のおっとりとした清楚な顔には、友一と同種の、しかしどちらかと言えば不安と緊張が主の表情が浮かんでいる。
    薬指に指輪の嵌まった左手が、不安そうに彼の腕に添えられている。
     夫の友一が二十六歳、妻の智香が二十五歳の二人は、幼い頃から互いだけを見てきた幼馴染同士であり、
    そのため、二十代も半ばに達した今、軽い倦怠期を迎えていた。
    お互いから新鮮味が失われ、互いに異性としての魅力を感じなくなりつつあるのである。
     彼らはその倦怠期を打破するため、友一の発案により、とある試みに臨もうとしているところである。
     円らな瞳が真っ向から友一を見据えた。そこには不安と恐怖があった。
    乗り気でない妻を押しきる形での決定だったため、友一の心はずきりと痛んだ。
    「なあ、智香、どうしても嫌なら……」
     思わず口にしかけた言葉は「いいの」というやや強い言葉に打ち消された。
    「だって、見られるだけなんでしょ。それなら……恥ずかしいけど、別に……」
    「お前がそう言うなら……」
     二人は、スワッピング相手募集用の会員制サイトで知り合った青年を待っているところである。

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    本当はカップル同士のスワッピングをする予定だったのだが、向こうの都合で女が来られなくなったため、急遽、青年単独での参加となった。
    まだ躊躇いのあった二人は、そういう事情ならばと半ば安堵しつつ中止にしようとしたのだが、
    「ホテル代は全額負担するので、愛撫を、それが無理でもせめて見学だけさせて欲しい」
    との熱心な頼みを拒みきれず、こうして会うこととなったのである。
     待ち合わせ時間の五分前、メールで確認した通りの外見の青年が近づいてきた。
     よく筋肉のついた均整の取れた体をした青年だ。
     待ち合わせの相手は、サイト上のプロフィールによれば、
    登録名はT・S(後のやりとりで「サトウタロウ」という名前だとわかった)、
    年齢は二十歳、身長は百七十二センチ、体重は七十四キロ、
    ペニスサイズはS(直径四センチ以上、長さ十八センチ以上)で雁高の非包茎、テクニックに自信あり、
    信頼度は高(最高、高、並、低の第二位、プレイ経験者からの評価の平均で決まる)、とのことだった。
    また、プレイ体験者の感想は「とても燃えました」とか「彼女があんなに乱れるのは初めて見ました」とか
    「定期的にお願いしています」などと高評価だった。
     近寄ってくる青年も、ペニスサイズやテクニック云々はともあれ、大体プロフィールの通りのように思われた。
     青年が二人を見て「あの」と声をかけてきた。
    「キジマご夫妻ですか」
    「サトウくん?」
     友一が答える。
     相手は頷き、申し訳なさそうに頭を下げた。
    「はい。サトウです。今日はこちらの都合で予定を変えた上に、無理なお願いまでしてしまってすみません」
    「あ、いやいや、いいんだよ。どっちかと言えば予定が変わって安心した面もあるし……
    それにホテル代も出してくれるんだろう。文句なんかないよ。折角会ったんだし、今日はなるべく楽しくやろう」
    「そう言っていただけると嬉しいです。ところで、そちらがトモカさんですか」
    「え、は、はい……」
     智香が小さな声で頷き、視線を避けるように友一の後ろに隠れた。
     友一はそんな妻の様子に昔の新鮮な初々しさを思い返しながら、苦笑した。
    「悪いね。智香はちょっと緊張してるんだ」
    「そうですか。まあ、無理もないですよ。こういうの、初めてなんですもんね。
    それにしても、可愛い奥さんですね。羨ましいですよ」
    「嬉しいことを言ってくれるね。まあ、立ち話も何だし、早速ホテルに行こうか。もう予約を入れてあるんだろう」
    「ええ、長引いてもいいように、一応、泊まりで。じゃあ行きましょうか。奥さんと一緒に歩いてもいいですか」
    「一緒に、かい」
    「はい。恋人みたいに。奥さんは他の男性に触れて旦那さんの良さを確認して、
    旦那さんは嫉妬して奥さんへの愛情を確認するんです」
     友一は渋い顔をしながらも、スワッピングに関しては大先輩である六つも年下の青年の言うことを受け容れた。
    「ありがとうございます。じゃあ奥さん、こっちへ……」
    「あ……」
     サトウが智香の手を引いたと思った瞬間、妻の体がサトウの腕の中に転がり込んでいた。
     
     いやらしい手つきで腰に腕を回しながらサトウがにこやかに言う。
    「奥さん、凄く良い体じゃないですか。本当に、キジマさんが羨ましいです」
    「あ、あの、サトウくん、手が……」
     智香が逃れるように身を捩る。腹側に回されたサトウの手が太腿や下腹部を撫でている。
     人通りの皆無でない路上で妻が公然と体を触られている。
    友一は不快感と微かな興奮を覚えながら、やや強い口調で制した。
    「サトウくん、愛撫までは許すけど、場所はわきまえてくれ」
    「あっ、すみません、奥さんが魅力的だから、ちょっとむらっと来ちゃって……気をつけます」
     サトウは神妙に頭を下げ、智香の体を弄り回すのをやめた。
    以後はおかしなこともせず――それでも夫としては不愉快だったが――普通に腰を抱いて智香をエスコートしていく。
     友一は、スワッピングのような異常な趣味の持ち主ではあるが、
    少し考えの浅いところがあるだけで、根は素直で誠実な人間のようだ、とサトウのことを評価した。
     雑談しながら歩くこと十五分、一同はホテルの部屋に着いた。
     上着を脱ぎながらサトウが二人に言った。
    「早速触らせて貰っていいですか」
     今日の手順は、まずベッドでサトウが智香を愛撫し、それが済んだら、
    一旦友一と智香がシャワーを浴び、ベッドで二人がセックスするという形になっている。
    「で、でも、まだシャワー浴びてない……」
     智香が緊張に顔を強張らせながら言う。
     友一は、それが本心でないことを知っている。二人は出発前に念入りに体を清めてきたのだ。
    気にするほどの汚れはない。これは単なる時間稼ぎなのだ。
     友一は智香に助け舟を出そうとしたが、サトウの方が早かった。
     智香の手を取り、じっと顔を見つめて言う。
    「奥さん、僕、女の人の匂いが好きなんです。どうせ奥さんを抱けないんですから、
    せめて、それくらいは許してください」
    「で、でも……」と智香は躊躇いを見せたが、サトウの再三の頼みに、遂に押し切られてしまった。
     ベッドまで移動し、「脱ぎますね……」と蚊の鳴くような声で呟いて、智香が服を脱ぎ始める。
     他の男の前で妻が肌を晒すことに暗い気持ちを抱きつつ、友一もシャツのボタンを外し始めた。
     サトウもそれを見て脱衣を始めた。
     最も早く下着姿になったのはサトウだった。
     後はズボンを下ろすだけの友一と、スカートを下ろしてストッキングに手をかけていた智香は、それを見て硬直した。
     二人の視線の先には、堂々と晒された逞しい体があった。
    股間は早くも戦闘態勢に入り、Sサイズが嘘でないことを誇示している。
    「わあ……」
     智香が讃嘆とも驚愕ともつかない声を上げてサトウを見ている。
    その視線は逞しい体の各所――股間もだ――に注がれている。
     友一は自分がサトウに動物の雄としてどこまでも劣っていることを理解せざるを得なかった。
    雄としての敗北感と共に、雌を取られるのではないかという焦燥感と嫉妬心が湧き起こってきた。
     サトウが苦笑と共に言った。
    「そんなに見られると恥ずかしいです。でも、そんなに気になるんでしたら、
    いっそ、パンツも脱いじゃいましょうか。勿論、その時はお二人にも裸になって貰いますけど……」
    「いえ、あの、それはちょっと……」と慌てて手と首を横に振る智香を制し、友一は頷いた。
    「……ああ、お願いするよ」
     妻が肌を晒すのはなるべく先延ばしにしたかったが、
    それ以上に、妻がサトウの巨大なものにどういう反応を示すかを知りたい欲求に駆られたのである。
    元々友一は、妻が他の男に抱かれる様を見せつけられるのなら、
    いっそ巨根の持ち主に貫かれる様を見てやろうではないか、という思いからSサイズのサトウを選んだのだ。
    幸か不幸かそれが果たされないことが決まった今、彼の興味は、せめて妻がそれを見た際にどう反応するかに集中していた。
    「ユウくん!?」
    「どうせ、後でそうなるんだから……ちょっと早くなっただけだよ」
     非難の声をそうなだめ、重ねて友一はサトウにパンツも脱ぐよう促した。
     サトウがパンツを下ろした瞬間に飛び出してきたものに、二人は息を呑んだ。
    三日月のように反り返り、下腹部に張り付きそうな急角度で天を目指すそれは、子供の腕のような凶器だった。
    年齢にそぐわない百戦錬磨を示すように黒光りしており、露出した先端は赤黒く膨らんで傘を広げ、
    幹との境目には深い谷と山がある。付け根の下には握り拳ほどもある袋がぶら下がっている。 友一は委縮したように皮の中に引き籠もった自らの股間を見下ろし、決定的なまでの戦力差の存在を悟った。
     敗北感に苛まれながら妻を見ると、智香は目を見開いたまま、サトウの股間を凝視していた。
     智香がちらりと友一の股間に視線を移すが、友一と目が合うと、気まずそうに視線を逸らした。
    取り繕うように下着姿になり、向けられるサトウの視線と友一に配慮してか、
    体を隠しながらおっかなびっくり下着を脱いでいく。
     清楚な智香がペニスを見比べている。自分のものと今日会ったばかりの男のものとを比較している。
    清純な妻が見せた行動に、友一は困惑と興奮を禁じ得なかった。
    「やっぱり思った通りだ。むちむちした良い体ですね。素敵ですよ、奥さん」
     友一が初めて味わう感情に戸惑っている間にも、サトウは行動を進めていた。
    彼女の親兄弟と友一以外の男の目に触れたことのない、智香の清純な体を舐め回すように見ている。
     掌に収まりきらない豊かな胸と清楚な乳首、自然な曲線を描く腹から腰にかけて、
    肉感的な尻と太腿、きめ細やかな肌、という智香の体をサトウはいたく気に入った様子だった。
    「まずは軽くいきましょうか」
     サトウが後ろから智香を抱き締めた。
    「ひっ」と声を上げて智香が身を捩るが、サトウは体の前に腕を回して離さない。
     自分しか触れたことのない妻の体が、目の前で他の男に抱き竦められている。
    裸の男が裸の妻を、肌と肌を合わせて抱き締めている。友一は喉がからからに渇いていくのを感じた。
    「奥さん、お尻に当たってるもの、何だかわかりますか」
     智香は顔を紅潮させ、恥ずかしげに首を振った。わからないのでなく言いたくないのだろう。
     サトウは智香の尻にあの巨大なものを押し当てているのに違いなかった。
    あの自分のものとは比べ物にならないペニスが妻の体に触れていると思うと、
    胸の辺りが冷たくなって嫌な汗が出てくると共に、なぜだか腹の底が熱くなってくる。
    「ほら、旦那さんにも聞こえるように、ちゃんと答えてください」
     腰を動かしながら、サトウは慣れた調子で智香を言葉で嬲っている。
     智香は涙目になりながら、か細い声で「おちんちん……」と答えた。
    普段ならば恥ずかしがって絶対に口にしないであろう言葉だ。早くも雰囲気に中てられつつあるらしい。
    「答えてくれたお礼をしますね。顔こっち向けて……」
     言うが早いか、サトウは智香の顔を横に向けさせて顔を近づけ、驚いたように開いた口に唇を当てた。
     智香が抵抗するように身を捩り、助けを求めるように友一を見た。
     だが友一は、救いを求める視線を受け止め、頷いた。それはキスの許可だった。
     ショックを受けたような顔をした後、諦めたのか、智香は目を閉じた。
     抵抗が止んだのをよいことに、サトウは智香の口の中にまで攻め込んだ。
    口を塞ぐように唇を当て、舌を滑り込ませている。鼻にかかった息遣いと淫らな水音が響く。
    その間も腰は尻に擦りつけられており、片方の手は友一以外の男が触れたことのない胸を撫でるように揉んでいる。
    手の中で智香の大きな胸が柔らかく形を変えている。
     やがて、最初は戸惑い、拒むように身を捩っていた智香に変化が訪れていた。
    逃れようとしていた唇は積極的にキスに応じ始めているし、
    頭を押さえる必要のなくなった手はいよいよ本格的に胸を弄び始めている。
    一方で、抵抗するようにサトウの手を押さえていた手は、胸に導こうとするかのように優しく添えられていた。
    「キジマさん、奥さんのおっぱい凄いですね。ほら、手に余っちゃう」
     友一には返事をする余裕も、抗議する余裕もなかった。
    妻が目の前で弄ばれ、しかもそれを受け容れつつある様子に釘付けである。
    「どれどれ、こっちの方は……ああ、もっさもさですね」
    「や、は、恥ずかしい……」
    「僕は毛の濃い女性の方が好きなんで、こういうのは凄く興奮します」
     サトウの手は智香の下腹部に滑り降りており、濃い目の陰毛を弄んでいる。
     友一は、指がそこで停まってくれることと、その先に進んでくれること、その矛盾する二つの願いを同時に抱いた。
     願いは一つだけ叶い、もう片方は叶わなかった。
    「うわ、凄い。とろとろだ。奥さん、キスとおっぱいだけでこんなになっちゃったんですか。
    感じやすいのかな。それとも、欲求不満?」
    「やっ、駄目、やっ、ああ……!」
     サトウの手が動くと水気のある音が響いた。それは友一が今まで聞いたことのない音だった。
     智香は蠢くサトウの手を必死に押さえ、押し殺した声で啼きながら、脚をくねらせている。
     
     妻が見せる痴態に友一は驚かずにいられなかった。
    きっと、サトウが言うように、感じやすいからでも欲求不満だからでもあるだろうが、それだけが理由ではない。
    スワッピングという異常な状況で興奮していることもあるだろう。
    だが、一番の理由は、サトウの愛撫が巧みだからに違いない。友一のそれよりも。
     友一は唇を噛んで目の前の光景を見守った。
    「ほら、奥さん、声を我慢しないで……旦那さんもその方が興奮しますよ。
    ほら、旦那さんのチンポ、もうあんなです。奥さんを見て興奮してるんですよ」
     その言葉にはっとして股間を見ると、確かにそこには興奮してそそり立つものがあった。
    しかも、その猛々しさは普段の比ではない。智香が初めて体を開いてくれたあの高校二年生の夏の日に匹敵する。
     しかし、その人生の中でも屈指の勃起も、あの巨大なものを目にした後では、感動よりも失望が大きい。
    今までで最大の状態でも、何の気負いもなしに立ち上がったあれに遠く及ばないのだと、格の差を思い知らされた気分だ。
     濡れた瞳で彼を見ている智香も似たような失望を味わっているのかもしれない。
     後ろから押しつけられるものと、目の前で立ち上がっているものの哀れなほどの質量の違いを、
    智香はどう思っているのだろうか、と友一は思った。
    そこにあるのは失望か、嘲笑か、それとも変わらぬ愛情か。
     サトウの言葉が効いたのか、智香の声が大きくなった。
    嬌声を上げ、サトウが耳を甘噛みしながら何事かを囁くと、
    「ユウくん、どうしよう、凄いの、凄く気持ち良いの!」と声を張り上げる。
    その顔は女の顔へと変わろうとしていた。
     もう一度口で口が塞がれた直後、手品のようにサトウの手が閃き、智香が全身を震わせた。
    電気を流された魚のように震え、ぐったりとサトウに体を預けた。
    「あ、キジマさん、奥さん、イッちゃったみたいですね。感じやすくて可愛いです」
     抱き留めた体をなおも弄びながらサトウが朗らかに言う。
     友一は何と答えるべきかわからず、曖昧な笑みを浮かべるばかりだった。
    「じゃあ、ベッドに連れていって続きをしますね」
     サトウは智香の体を軽々と抱き上げた。
    「お、おいおい、セックスはなしだって言っただろ!」
     続きという言葉からはそれしか連想できなかった。
    「やだな、違いますよ。本番ができないんだから、せめてたっぷり愛撫をさせて欲しいっていうだけです。
    ねえ、愛撫だけならいいでしょ、キジマさん」
     智香をベッドに下ろしてゆっくりと覆い被さったサトウが友一を見た。
     友一にはその目が、彼の男としての器の小ささを笑っているようにも、抑えがたい欲求の捌け口を求めているようにも見えた。
     智香も彼を見ていた。涙の光るその目は、しかし情欲にも濡れている。
    抑えがたい疼きに流されそうになる自分を止めて貰いたがっているのか、
    はたまた、疼きに流されていくことの許しを求めているのか。
    どちらなのか、友一には判断がつかなかった。
     友一は苦悩したが、どうせ一線を超えることはないのだから、と自分を納得させ、結局、流れに身を任せることにした。頷き返す。
     直後、また悩ましげな吐息と水っぽい音が響き始めた。
    覆い被さったサトウが智香の唇を奪い、智香がそれに応えているのだ。
    流石に自分から腕を絡めこそしていないが、その手は控え目にサトウの腕に添えられている。
     友一には、それが力の籠もった抱擁のようにすら見えた。
    体の芯が冷えていくような感覚に襲われながら椅子を運び、ベッドの近くに腰を下ろす。
     開かれた智香の口が咀嚼するように動き、何かを飲み下すように白い喉が動く。
    それと共に、唇の合わせ目から唾液が零れ落ちる。智香はサトウの唾液を飲んでいるのだ。
     しかも、それが決して強制的なものでない証拠に、サトウの唇が離れると、智香はそれを追いかけるように顔を動かしている。
    離れていく舌をしゃぶるように引き留めることさえしている。まるで恋人や夫婦のように親密なキスだった。
     散々唇を征服したサトウは、顔を離し、体を少しずつ下へとずらしていく。
    首筋を撫で、火照った肌に唇を寄せ、胸元へと向かう。
    豊かな胸に赤ん坊のように埋めた顔を動かすと、押し殺した喘ぎが上がった。
     サトウは友一に見せつけるように豊満な胸を揉みしだき、或いは張り詰めた桃色の乳首を口に含んだ。
    しばらく続けていくと、智香の手がサトウの頭に触れた。
    もぎ離そうというのとも、押し付けようというのともつかない触れ方だ。 しばらく胸を楽しんだ後、サトウは今度は体を上にずらし、腋へと顔を寄せた。
    何をしようとしているのかは一目瞭然だったが、友一にはそれが真実だとは思えなかった。
    そんなところを舐めるなど有り得ないことなのだ。
     腋を開かされた智香が焦ったような声を上げた。
    「そ、そこは、恥ずかしいからっ」
    「いいからいいから」
     サトウは意に介する風もなくそこに顔を近づけ、舌を這わせた。くすぐったさと恥ずかしさを堪えるような声が上がる。
    「や、やだ、くすぐったいっ……駄目っ、こんなの……汚いからっ……」
    「ここ舐められるのは初めてみたいですね。勿体無いな。ここも立派に感じる場所なのに。
    折角だから、僕がここでも感じられるように、奥さんのこと、躾け直してあげますね」
     乳首を弄りながらサトウが笑う。
     少し経つと、智香の声が艶を帯び始めた。性感を刺激された女の喘ぎだ。
     両方の腋を散々に舐め回された智香は脱力し、荒い息遣いと共に豊かな胸を上下させている。
     サトウはそのまま更に体を下へとずらしていった。
     いよいよ智香の大事な部分にサトウの手が伸びるのか、と友一は息を呑んだが、
    幸か不幸かそうはならなかった。均整の取れた体は股間を無視して足先へと下がっていった。
     サトウは足を掴むと、あろうことか、そこに舌を這わせた。
    智香が驚きの声を上げて足を引こうとするのを捕まえ、足の裏を舐め回し、
    指一本一本を口に含み、膝裏を舐め、太腿に口づけ、丹念に愛撫を加えていく。
     智香の反応は腋の時と同様だった。くすぐったさと恥ずかしさはやがて気持ち良さに変わったのだ。
     妻の体が開発されていく様を目の当たりにして、友一は興奮と絶望を同時に味わった。
    性的なことに未熟な妻の体が少しずつ開発されていくことへの興奮。
    妻の体を開発しているのが自分ではないことへの絶望。それが友一の心の中でどす黒くわだかまっている。
     再びサトウが体を動かした。脚を開かせ、その間に顔を寄せる。
    「いや、やめて……」
     智香が羞恥の声を上げて脚を閉ざそうとするが、サトウの力強い手に押さえられ、逆に余計に開かされてしまう。
    「凄く毛が濃いんですね、奥さん。オマンコ見えないじゃないですか」
     サトウが猫の毛並みを楽しむように智香の下腹部を撫でている。
    「お、お手入れするの、怖くて……だらしなくて、ごめんね……」
    「僕はこういうの好きですよ。とってもエッチで興奮します」
    「あっ、駄目、やめて、見ちゃ嫌……!」
     智香が泣きそうな声で訴えかけるが、サトウはそれが聞こえていないかのように、
    智香の濃い目の陰毛を掻き分け、裂け目を露出させた。
    「凄い。毛はこんななのに、オマンコは中学生みたいだ」
     サトウが感嘆の声を上げるのは無理もない。友一が大事に扱ってきたこともあり、
    智香のそこは酷く綺麗な筋を描いている。十代の清純さと端整さを保っている。
    「キジマさん、奥さんのオマンコ、凄く可愛いですね」
     サトウにそう言われても、友一はどう返事をしたものか迷い、結局、気まずい思いで目を逸らすばかりだった。
     サトウは特に返事など欲していなかったらしく、何事もなかったかのように智香の股間に注意を戻した。
    「中はどんなかな……あ、白い汁が零れてきましたよ、奥さん。今までので感じちゃったんですね。あ、勿体無い……」
     そのまま顔を埋め、犬が餌を貪るような音を立て始める。
     智香の体がびくりと震え、焦ったような声が上がった。
    「やっ、吸っちゃやだっ、音立てないでっ……は、恥ずかしいよ、ねえ、サトウくんっ、あっ、ひいっ……!」
     サトウは構わずそこを口で責め続けた。智香は手で顔を覆って啜り泣くような喘ぎを洩らし、
    陸に打ち上げられた魚のように体を躍らせた。
     それは友一が初めて見る反応だった。初めて聞く「雌」の声だった。
    未だかつて目にしたことのない濡れ方であり、未だかつてしたことのないほどに野性的な責めだった。
     幼い頃から知っている妻が他の男の手によって自分の知らない姿を晒していく。
    その光景に、友一は苦痛に満ちた異様な昂りを覚えた。
     股間に強い疼きを覚えて視線を下ろし、愕然とした。
    知らず知らずの内、彼は精一杯に立ち上がったものを扱き立てていたのだ。
    「糞っ」と悪態をついて手を離す。
     その間にもサトウの責めは続いていて、股間を貪る頭を押さえたまま、甲高い声を上げて智香が身を仰け反らせた。
    何度か震えた後、脱力してぐったりとベッドに体を投げ出す。 だが、サトウの責めに容赦の二文字はなかった。
    達した直後の敏感になった体をそれまで以上の荒々しさと細やかさで責め続けている。
    「あっ、ちょ、ちょっと待ってっ……あっ、やっ、あっ、ま、まだイッた、ばかり、だからっ……ゆ、許してっ、休ませてぇっ……!」
     サトウが智香の股間を解放したのは、智香が更に三回ほど絶頂に達してからだった。
    顔を離したサトウは、全身を火照らせ、汗ばませた智香に再び覆い被さった。
    「おい、もういいだろう!」
     とうとう堪え切れなくなり、友一は腰を浮かせて、半ば怒鳴るように言った。
    これ以上放っておくと取り返しのつかないことが起こるような気がした。
    「最後にキスするだけですよ。そうしたら、キジマさんと交代しますから」
     それならば、と友一は、不承不承ながらも引き下がり、腰を下ろした。
     サトウは智香と、夫婦や恋人と言うよりは不倫中の男女のように濃厚なキスを交わした。
    見守る友一からすれば長過ぎるほどに長いキスを終えた二人は、二言三言言葉を交わしているようだった。
     智香の股間を指先で弄びながら、サトウが困ったような顔で友一を見る。
    「奥さん、チンポが欲しくなっちゃったみたいで、僕のを入れて欲しがってるんですけど、どうしましょう」
    「な、何だって?」
     友一はサトウの言葉が理解できなかった。
    寄りにも寄って智香がサトウのものをせがんでいるなど、サトウの口から出任せとしか思えない。
    「ち、違うの、ユウくん!」
     股間を弄られながら智香が発した、慌てたような言葉に、友一は深い安堵を覚えたが、続く言葉に一気に叩き落とされた。
    「あのね、サトウくんがね、私と、その、エ、エッチ……したいって言うから……
    ユウくんに訊いてみようって……ユウくんがいいなら、私も……」
     サトウが言葉を継いだ。
    「キジマさん、メールで言ってたじゃないですか。
    奥さんがデカチンで犯されてるのが見たいって。そのためにチンポの大きい僕を選んだんだって」
    「えっ……そ、そうだったの、ユウくん」
     驚いたような顔で智香が友一を見る。
     友一は返答に窮すると共に、なぜこのタイミングでそれを言うのだ、とサトウへの苛立ちを覚えた。
     人を誘惑する悪魔めいた態度で、サトウが友一の代わりに答えた。
    「そうですよ、奥さん。旦那さんは、奥さんが大きなチンポを突っ込まれて
    気持ち良くなっちゃってるのを見たいって言ってたんです。僕の彼女が来てれば、そうなるところだったんです。
    ねえ、奥さん、奥さんさえよかったら、このまま僕達は最初の予定通りにしましょうよ」
     言われた智香が、どうしてよいかわからない、といった顔で友一を見た。
    その目はサトウの提案を拒んで欲しがっているようにも、許可を出して欲しがっているようにも見えた。
    「ねえ、キジマさん、一言、やっていいって言ってくれれば、キジマさんが見たがってたものを見られるんですよ」
     矛先は友一にも向いてきた。
     友一は激しい葛藤に襲われた。受け容れるべきか、拒むべきか。
     また、そもそも普通であればどうするかなどわかりきった問いで悩んでいること自体に気づいた時、彼は愕然とした。
    それはつまり、彼が最愛の妻を別の男の手に任せる願望を抱いているということに他ならない。
     彼はサトウに大事な部分を責められて悶える智香の姿を目の当たりにした時の異常な昂りを思い出した。
     あれこそはつまり、その背徳的な願望が満たされていく快感だったのではないか。
    自分は、妻が他の男に抱かれ、自分の知らない顔を見せていく姿を見たくて堪らないのではないか。
    そうした姿は酷く興奮をそそるものではないのか。そんなことを考えた。
     長い葛藤の末、友一はサトウの申し出に同意した。
    「わかった……ただし、智香が嫌がることはするなよ」
    「勿論ですよ。たっぷり気持ち良くしてあげますから、キジマさん、そこでじっくり見ててくださいね」
     言うなり、サトウが体の位置を調整し、開いた脚の間に身を割り込ませ、腰と腰を合わせた。
     先走りを滴らせる凶悪な先端が、草叢に隠れた智香の裂け目に押し当てられた。
     智香が不安そうな声を上げる。
    「あ、あの、サトウくん、ゴムは……」
    「おい、避妊はちゃんとしてくれないと困るぞ」
    「でも、その方が興奮するでしょ。お二人とも、生入れも中出しもまだしたことないって話じゃないですか。
    初めての中出しが旦那さん以外って、燃えませんか」
    「な、何馬鹿なことを……」
     そう言いつつも友一は、自分以外の男が智香に最初に中出しする、という想像に寒気のするような快感を覚えていた。

     

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